武田ウェバー社長「自信満々」に死角はないか シャイアー巨額買収が成立しても残る不安
それでも、「ウェバーでなければ買収はできなかった」(大手製薬会社役員)と声があがるように、力業で巨額買収を成し遂げたウェバー社長が自信を深めるのは当然かもしれない。
しかし7日の会見は、臨時株主総会で約9割の株主の賛成票をもって買収に成功した会社が、勝利宣言をするための儀式にすぎなかった、と言われても仕方のない内容だった。約30分間のプレゼンテーションでウェバー社長が示した内容はこれまでの繰り返し。報道陣との質疑応答に使った時間はわずか15分にすぎず、質疑応答で新しい内容に言及することもほとんどなかった。
個人株主でつくる有志団体「武田薬品の将来を考える会」などは買収に関する疑問を呈してきた。それに答えることは武田薬品経営陣の責務であることは言うまでもない。
6兆円の巨額負債を減らせるのか
買収に伴って有利子負債は現状の1兆円から6兆円近くへ膨らみ、それを5年内に大きく減らすのが会社が描く青写真だ。シャイアーが叩きだす高いキャッシュフロー(現金収支)や統合後のコスト削減、資産売却によって有利子負債を返済し、財務の健全性を急回復させるという見通しを示している。しかし、その内容はこれまでの説明と何ら変わりはない。
市場や一部株主が疑問視しているのは、たとえば借金返済の原資となるシャイアー買収後の「新・武田薬品」のキャッシュフローが、買収時点の高い状態のまま持続可能なのかという点。
武田薬品は財務健全性の指標として、債務の返済能力を示すEBITDA(営業利益+のれん代・税金・利子支払い)に対する有利子負債の比率をよく使う。株主の支持を集めるための半ば「公約」である180円配当が中長期で持続可能であるためには、キャッシュフローなどの数字ではなく、財務会計(IFRS)上、十分な利益があることが不可欠になる。これこそ個人株主がいちばん知りたいポイントだった。2021年度から、財務会計上の1株利益が増加するとは言うものの、今回の会見でもその道筋は明確には示されなかった。
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