サピと言えば、首都圏の受験の世界では知らない人はいない有名塾。男女御三家をはじめ、毎年多くの生徒を偏差値上位校に合格させる中学受験塾界の名門だ。人気は高まるばかりで、都内の旗艦校ともなれば、クラス数は15にも及ぶ。
1年生からの入塾は、前出のママ友の言葉がきっかけになった。「新4年生クラス(3年生2月)からの入塾には厳しい入塾テストが課せられるため、希望者全員が入れるわけではない。だから1年生から入ったほうが安全よ」。どうせどこかの塾にお世話になるのならばと、小1からの入塾を決めた。
第1関門 トップクラスから陥落という心労
低学年から通塾する子はさすがに少なく、葉子ちゃんの通う校舎では1~2クラス。幼稚園受験、小学校受験と経験豊富な葉子ちゃんはつねに上位クラスに席を置いていた。
通塾日もまだ週に1回。習い事の一環という意識だった。それに変化が訪れたのは3年生の2月頃。中学受験のセオリーどおりに多数の子が入塾してくると、立ち位置は一変。クラスは一気に12クラス編成となり、葉子ちゃんは真ん中あたりの成績のクラスというポジションになったのだ。
「1年生から入っている私が下で、新しく入ってきた人のほうが上だなんて。今までやってきたことはいったい何だったの!」
葉子ちゃんは複雑な心境を家で語るようになる。学校では成績もよく、みんなをまとめるリーダー的存在として一目置かれていた葉子ちゃん。だが塾では、トップ集団には食い込めないという、情け容赦ない事実。
不安と不満の気持ちがふくらむなか、5年生で生理が始まると、ホルモンバランスの影響からか時折、目に見えていら立つ様子も見えた。
高学年になると、さらに「女の子ならでは」の悩みが出てくる。顔にできたニキビが気になり、学校には毎日マスクをつけて登校した。「なんで私をこんな顔に産んだの! もう、死にたい!」と叫ぶことさえあった。
小学生の女の子でこれだけ荒れる姿を見たら、大抵の親は激しく動揺してしまうかもしれない。しかし、母親の知子さんは冷静だった。「そのままの気持ち」を受け止めることに徹したのだ。いら立ちの背景にあるであろう成績のことは口にせず、「ニキビの話に向き合って、いい洗顔料がないかと探したり、彼女の声になるべく耳を傾けるようにしていました」(知子さん)。
塾の成績はというと、引き続き中間層を漂うばかり。実は葉子ちゃん、国語の成績はずば抜けており、偏差値は70以上、全国3位の成績を取ったこともある。問題は算数だった。
「“どうして?”という疑問に納得しないと進めないらしく、公式を使えば早く解ける問題も、自分で解の出し方を見つけて解こうとするために、時間がかかり、テストではなかなか点が取れませんでした」(知子さん)
母親の知子さんは自身が設立した会社を経営する多忙の身だ。娘の受験勉強をがっちりサポートするには時間が足りない。
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