アメリカを沈ませかねない5つの深刻な危機 株式相場の乱高下は何を意味するか

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こうした専門家たちの見立てでは、市場を混乱させているのはアメリカ経済に対する先行き不安ではなく、トランプ大統領や彼の側近たちに、少なからぬ問題を抱えているアメリカ経済を管理する能力がないことである。

中国との話し合いが進展しているとする、トランプ大統領のこのところの主張もまた、株式市場に影響を及ぼそうとする、見え透いた試みだと受け止められている。実際には話し合いは始まったばかりで、その成功が保証されているとはとうてい言いがたい。

アメリカ軍のシリア撤退という恐ろしい決断

日本との貿易交渉は視野にはあるが、それも中国との協議期限である3月1日が過ぎなければ真剣味を帯びることはないだろう。しかし世界第2位と3位の経済大国との貿易摩擦の話題は、市場や経済を下降に導くことにしかならない。

3つ目は、アメリカ国内外の安全保障政策の危機である。アメリカ政府の政策決定に関わっている上層部にとって最も厄介な危機は、小規模ながら戦略的に重要なアメリカ軍のシリア駐留を打ち切る、というトランプ大統領の突然の声明によって引き起こされた。

シリアへの長期駐留の判断については合理的な議論がされており、政策専門家たちのほとんどは、急速な撤退はシリアのアメリカ連合軍(ほとんどシリアのクルド人たち)の壊滅につながるだけでなく、その地域におけるイランとロシアの役割を強化することにもなると指摘している。

それ以上に、イスラム過激派組織「イスラム国(IS)」とアルカイダがいまだ勢力をもつ集団であるという現実があり、アメリカの撤退はテロリストの攻撃を再び深刻な規模に発展させるおそれもある。

「私が最も危惧しているのは、アメリカの政府職員や施設を標的とした、大量の犠牲者を出すおそれのあるテロ攻撃だ。機密性の高いアメリカのインフラをターゲットにした壊滅的なサイバー攻撃も含まれる」と、ある情報機関の高官は話す。「トランプ政権はそのときどうするのだろうか。誰を非難するのか、また、その非難は信頼できるものだろうか」。

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