金正恩が新年挨拶で米国に示した警告の真意 非核化交渉再開と核開発への回帰を同時表明

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
建設中の温泉観光地区を視察した金正恩氏(2018年11月、写真:KNS/KCNA/AFP/アフロ)

アメリカと北朝鮮の非核化交渉が膠着状態に陥っている中、北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)・朝鮮労働党委員長が1月1日に新年の辞を発表した。

金委員長は新年の辞の中で、アメリカに向けてラブコールと警告を同時に送り、北朝鮮に対する経済制裁解除など、積極的な関係改善へ圧力を加えた。2018年6月に行われた初の米朝首脳会談に次いで、「2回目の首脳会談を行う準備ができている」と述べたが、北朝鮮側の非核化への努力に対し、アメリカにそれ相応の措置がなければ対話することにこだわらない立場も明らかにした。

そして、「われわれはアメリカ、北朝鮮の両国間における不幸な過去の歴史に今後も固執することはなく、それを抱え続ける意思もなく、1日でも早く過去にメドをつけ新たな関係構築に向かって進む用意がある」と述べた。

特に、「私は昨年6月にアメリカ大統領と会い、有益な会談を行って建設的な意見を分かち合い、互いが抱えている憂慮とこじれた問題の解決に向けた正しい方法について認識をともにした。再び、いつでもアメリカ大統領と対話する準備はできており、国際社会が歓迎する結果をつくるために必ず努力するだろう」と表明した。

制裁や圧力があれば、やむを得ない?

一方で、金委員長は「ただ、アメリカが世界を前にして行った約束を守らず、わが人民の忍耐を見誤り、一方的に何かを強要しようとし、共和国(北朝鮮)に対して制裁と圧力をかければ、われわれとしてもやむを得ず自主権と国家の最高利益を守護し、朝鮮半島の平和と安定を成し遂げるための新たな道を模索せざるをえなくなるかもしれない」と警告した。

ここで登場した「新たな道の模索」という発言に対し、韓国のシンクタンク・世宗研究所研究企画本部長の鄭成長(チョン・ソンジャン)氏は、最悪の場合、北朝鮮が経済建設と核武力建設の並進路線に戻りうることを示唆したと分析する。

2018年9月の南北首脳会談で合意した平壌共同宣言に基づき、北朝鮮寧辺(ニョンビョン)の核施設を恒久的に廃棄する合意にアメリカが相応の措置をとらずにいることについて、「新たな道」発言は北朝鮮内部にある不満を反映したものではないか、と鄭氏は指摘する。

次ページ本心は「過去への回帰」より「アメリカとの関係改善」
関連記事
トピックボードAD
政治・経済の人気記事