「省エネルギーの潮流」から取り残される日本 ついに中国や韓国よりも遅れてしまうのか

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ここでわかるのはCO2削減というのは、単なるエネルギー問題ではないということだ。それゆえ、社会全体を俯瞰し、組み合わせを考えながら全体を減らしていくことが求めれられる。その中での建物の役割は決して小さくない。

さて、ひるがえって日本である。2020年に省エネルギーに関する法律が新設、あるいは建築基準法が改正となるはずだったが、どうやら見送られそうな様子になってきた。なんと低レベルなことをしているのかと思う。

ちなみに日本が目指す新たな基準は上記の建物のカーボンニュートラル化やエネルギーゼロというレベルにはほど遠い。そのレベルですら、現在の日本の住宅の5%しかクリアしていないので、それを義務化するのが難しいと言われているのである。

だが「仕方がない」という感覚でいつまでもいると「日本のガラパゴス化」が進むだけだと思う。

環境に対するさまざまな活動は、バックキャスト(目標を設定し、そこから現在に立ち戻ってやるべきこと考える手法)という形で行われることが多い。つまり、大きな目標をあらかじめ示し、さまざまな試行錯誤を重ねて、最適化を求めていくことでスピードのある改革ができるというわけだ。

日本でも「樹脂サッシ」など、高性能なサッシの基礎的な技術が蓄積されるなど、民間の実力も徐々に上がってきた。これからは、官と民が協力しながら、住宅の環境レベルを上げていくべきである。

こうした話をすると「新技術についていけない人をどうするか」の問題に突き当たる。実は、筆者はこの問題にはまったく心配していない。なぜなら、この国の92%の住宅、役所や学校などの公共建築を含む、ほとんどの業務系ビルディングは無断熱に近いからだ。なので、断熱の技術指導とともに、産業変換を行うべきである。

このように受け皿は大いにある。世界がどこに行くのか、その中で日本がどういう役割を担うかの方向性は、しっかり示すべきである。国際社会でやっていくには、新築の「建物のカーボンニュートラル化」はいつか達成しなくてはいけない。

その要素技術は輸出もできる新しい時代の産業だ。また新築だけではない、既存の建物の断熱化は大きな産業の芽だ。筆者は、規制強化は必要であり、これはただの規制ではなく、次世代社会への有益な誘導だと考える。だから、到達目標を最初に掲げる必要がある。国はそれに向かっての段階的な変更であることを説明する必要があると思う。

竹内 昌義 建築家、大学教授

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たけうち まさよし / Masayoshi Takeuchi

1962年生まれ。東京工業大学大学院修了。1991年に竹内昌義アトリエを設立した後、1995年に設計事務所「みかんぐみ」を共同設立。2001年からから東北芸術工科大学(山形県山形市)の建築・環境デザイン学科准教授となる。2008年から同教授。山形エコハウス(山形県が事業主体、環境省の21世紀環境共生型モデル住宅整備事業の一つとして選定)をきっかけに、環境・エネルギーに配慮した住宅を設計、紫波町オガールタウンの監修などを手がける。『図解 エコハウス』『原発と建築家』『あたらしい家づくりの教科書』など著書多数。

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