学問の下流化 竹内洋著
魅力的な書名だが、著者が近年、新聞雑誌に書いてきた100編余の書評、エッセイなどを再構成している。学問、格差社会、知識人、大学(特に東大)と大学改革、教養論をはじめ、いくつかのテーマに仕分けされていて、それぞれに現代的意義が伝わってくる。知識人では丸山真男を中心に蓑田胸喜(みのだむねき)、平泉澄(きよし)なども論じられ、別章での夏目漱石論までその流れで読むのも面白い。
教養論で興味を引くのはやはり教養主義の没落であり、かつ「邪魔する教養」が論じられるところだ。教養が邪魔して何かができないことが今ほど大事なときはないという指摘は鋭い。そして「学問の下流化」が通奏低音のように流れるのだが、下流学問とは要するにポピュリズムであり、ジャーナリズムや世論との相関が問われている。政治、学問の劣化の中でアカデミズムの復権は可能か、注目すべき視点である。本誌掲載の「読書日記」も収録されている。(純)
中央公論新社 1995円
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