乃が美で「年越し“生"食パン」が売れるワケ おいしさを追求するだけでは足りない

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以来、「切ったものを1枚ずつ、ラップにふんわり包んで冷凍しておくと、チンしたときに元の柔らかさになりますよ」というアドバイスも加えさせていただいている。これは、高齢のお客様にとても喜んでいただけた。

「年寄りの2人暮らしでは、一度に食べきれへん」「だから400円の小さいやつを買いたいけど、数(在庫)が少なくて……」と困っている方が多かったのだ。そんな方々への朗報を、僕たちはお客様の知恵のおかげで、お知らせできたのだった。

お客様とのご縁は何よりの財産

記念に作成した、特製のパンの袋止め(写真:乃が美提供)

乃が美は2018年10月2日に、開店5周年を迎えた。この5年、「乃が美」をご愛顧くださった方々に、何か恩返しをしたいと考えていた。そこで思いついたのが、オープンした頃、パンを入れる紙袋に添えていた「ご縁の5円」だ。開店当時、「乃が美」では、お客様と「乃が美」のご縁がこれからも続きますようにとの願いを込めて、紙袋を止める金帯に5円玉を結び付けていたのだ。

その後、パンの製造数が多くなりすぎて5円玉の数が追いつかなくなり、廃止してしまっていたが、僕が5円玉に託した「ご縁」への思いは、失われていない。そこで、考えた。周年記念を迎えた店舗で、特製のパンの袋止めを添えることにしたのだ。

この袋止めは、よくある水色のプラスチックの袋止めより数段大きい。五円玉のように、糸切りバサミくらいの大きさと形状をしていて、色は少し渋みのある金色だ。丈夫なつくりになっているので、何度でも、長く使える。

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10月2日の「乃が美」誕生の当日には、全店舗で創業当時と同じく5円玉をお渡しした。開店直後の「乃が美」をご存じの方なら、懐かしくあの頃を思い出してくださるだろう。知らない方も、ちょっと変わった趣向を楽しんでくださるだろう。お客様も一緒に楽しんでくださるのではないかと思ってのイベントだった。

このような、「ちょっと楽しい」「ちょっとうれしい」ひと工夫を添えるのが、僕は大好きだ。ダイエーで実演販売をしていた時代に、この楽しさを知った。その後、大阪プロレスというエンターテインメントの世界と出会えて、さらにその気持ちは大きくなった。人が少し驚いて、笑顔になって、その記憶をしばらく保つ。そんな「後を引く」演出を、これからもしていきたい。

しばらく心がぬくくなるような温かさや楽しさを提供することが、僕たちの仕事の持ち味であり、本質なのではないか、そうであればいいと思っている。

阪上 雄司 乃が美 代表

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さかがみ ゆうじ / Yuji Sakagami

1968年、兵庫県生まれ。高校卒業後、(株)ダイエー入社。飲食部門の責任者を務め、26歳で飲食店を開業。20年間にわたりさまざまな飲食店を経営。2007年、大阪プロレス代表取締役会長に就任。老人ホームの慰問をしている際に「子供からお年寄りまで、みんなが美味しく食べられる食パンを作りたい」と思いつく。パンの素人でありながら2年以上の月日をかけ、2013年、高級『生』食パン専門店「乃が美」を創業。5年で全国展開し、1日5万本売れるパンに育て上げる。

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