乃が美で「年越し“生"食パン」が売れるワケ おいしさを追求するだけでは足りない
「へえ、じゃあ、予約しとこか」となったお客様は、翌年から、こぞってリピート。ご親戚の分までたくさんご注文くださる方も増え、以来、年末恒例の習慣としてくださった。今では11月の段階から、「年越しパンの受付、いつから?」と聞かれる。2017年、1号店の12月31日の予約本数は1000本に上った。
4回の年越しを経て、不思議な法則があることがわかった。工場併設店全店の売り上げデータを見ると、年末にとった数字が良かった店は、その翌年の売り上げ平均値が上がっているのだ。年越しにパン、という前代未聞の働きかけは、お客様の新規獲得に、確実に一役買っていると私は見ている。
「乃が美」の「年越し『生』食パン」が、日本の年末風景の中にパンを根付かせるきっかけになったら……そう思うとわくわくしてくる。
史上初? 2日目以降がおいしいパン
前代未聞といえば、「乃が美」の「生」食パンの最大の強みをお教えしたいと思う。「乃が美」のパンのおいしさが本領を発揮するのは、実は、2日目以降だ。「焼きたてから時間が経つにつれおいしくなくなる」のが当たり前の、パンの既成概念を打ち破る特徴である。
開店してまもない頃、朝いちばんに来てくださるお客様に、焼きたてパンを用意していたことがある。しかし白状させていただくと、焼きたてではなくなった後のほうがおいしいという人すらいるのだ。
当時、焼きたてを前面に出したのは、あくまで「柔らかさ」に感動していただくためだった。「乃が美」の食パンの焼きたての柔らかさは、初めての人なら必ず驚いていただけるものだからだ。しかし、あれから4年、「乃が美」のパンになじんでくださった「乃が美ツウ」の方は、もう知っている。
2日目になって水分がある程度飛び、生地が締まると、焼きたてのときにはなかったうま味や甘みが出てくるのだ。僕は今でもしょっちゅう、社員にこういっている。
「1日目、2日目、3日目のパンを食べ比べてみ」
「お店の子たちにも、3パターン試食してもらうんやで」
多くのお客様は、2日目・3日目のパンを食べることになる。乃が美の食パンの多くは一斤だが、その量を1日で食べきる人ばかりではないからだ。その感覚を、僕たちももっておかなくてはいけない。それを把握したうえで、2日目、3日目のもっともおいしい食べ方を研究し、お客様方にはこうおすすめしている。
「……ということは、だんだん柔らかくなくなるということなのか?」と思われるかもしれないが、それもまた違うことをあるとき、お客様に教えられた。「『乃が美』のパンって、冷凍しといてチンすると、元通りフワフワになるのよね!」とおっしゃる方がいたのだ。1日目なみの柔らかさをキープする方法も、ちゃんとあったのだ。時間が過ぎて少々水分が抜けてもなお、段違いの水分を含んでいるからそういっていただけるのだと思う。
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