孤独死の後に残った現場の知られざる後始末

滅多に表へ出ない「特殊清掃」の裏側を見た

部屋の窓を見ると、確かに窓に穴が開けられていた。鍵の部分に小さな穴を開けて、ロックを解除したようだ。その穴からガラス全体にヒビが走っており、窓が壊れないようガムテープで補強してあった。

カーテンは開け放しになっており中をのぞくと、無数のキンバエがわんわんと部屋を飛び回っているのが見えた。

社長は窓を少しだけ開けて、殺虫剤のノズルの先を突っ込んでブシューっと薬剤を部屋にまいた。しばらく放置して、ほとんどのハエが動かなくなった後に、脚立を使って窓から部屋に入った。その途端、腐敗臭が鼻をついた。脳に直接ゴンッと響くような強烈な臭いだ。実は僕は、この物件を含め5件の特殊清掃現場に行ったのだが、ここの臭いがいちばん強烈だった。

密閉されているため臭いが消えない洋間のアパート

遺体の腐敗の進行具合もあるが、何よりここが洋間のアパートだったのが原因だと思う。密閉されているから臭いが消えないのだ。窓を開ければマシになるだろうが、近隣の迷惑になるためすぐに締めてしまった。

作業員に防毒マスクを渡され顔に装着して、やっとまともに呼吸をすることができた。

部屋で亡くなっていたのは、70歳前後の1人暮らしの男性だったという。死後2カ月が経過し、腐敗が進み臭いが漏れて近隣住民により通報された。

改めて部屋を見渡してみる。

ほとんど家具のないワンルームアパートだ。ただ、ゴミの詰まったコンビニの袋や、脱ぎっぱなしの服などで部屋は散らかっている。典型的なだらしのない男性の部屋だ。

肉体労働に従事していたらしく、作業道具が衣装ケースに入っていた。

お酒もよく飲んでいたようで、ビールの空き缶や焼酎の大きいボトルがいくつもたまっている。キッチンでは、亡くなる前に買っていた食材が腐っていた。

テーブルの上には種類ごとに分けた小銭がキチンと並べられていた。ふと生前の様子を思い浮かべてしまい、胸が痛んだ。

彼が亡くなっていたのは玄関先だった。

「玄関のドアに向かって倒れて、そのまま亡くなったんやね。ここが頭の位置や」

社長が指差す場所には、黒い塊が落ちていた。髪の毛と腐敗した体液が混ざって固まった物だった。頭が触れていた部分の壁紙は赤黒く色が変わっていた。

次ページ周りに体液を飛散させないよう、慎重に作業する
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