日本企業の「ド慎重さ」が実は見直されている 「石橋をたたいて渡る」のは悪いことではない

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こう書くと「石橋をたたいて渡るような意思決定の遅い会社はダメで、多くの日本企業がその状態に陥っている。海外のIT企業などはスピード違反の切符をどんどん切られながらも新しいビジネスを立ち上げている。だからスピード違反が正しいとデビットは言いたいのだろう」と思われるかもしれません。確かにスピード違反の切符を切られる覚悟は必要です。

しかし、最近「石橋をたたいて渡る」という言葉の意味を再認識する出来事がありました。私はいま、NECパーソナルコンピュータ(NECPC)という日本でも伝統のある組織の代表をする一方で、レノボというグローバル企業にも所属しています。レノボはかつて高度経済成長期に世界経済を席捲した日本企業よろしく、破竹の勢いでビジネスを伸ばしてきました。まさに失敗を多少しても構わないというアグレッシブな姿勢で成長してきたと言ってよいでしょう。

日本らしい丁寧さに外国人はしびれる

しかしとある日、「NECPCの品質管理方法を勉強したい」と、海外レノボの生産担当者が言ってきました。NECPCの品質管理といいますと、日本のビジネスマンの皆さんなら想像していただけると思いますが、まさに「石橋をたたいて渡る」慎重の上に慎重を重ねた管理です。

では、スピード違反を恐れずグイグイ業績を伸ばしてきたレノボが、なぜこんなことを言ってきたのでしょうか。

「NECのパソコンは、現場の作業者の創意工夫で、梱包箱の外観やシールのゆがみにまでカイゼンの手が入っている。シールが曲がっていることでパソコンが故障したりはしないが、(まっすぐに直せば)使うお客様は気分よく使っていただける。ここまで配慮しているということがブランドの信頼にもつながっている。」

NECPCの生産担当者が海外のレノボの担当者と情報交換をおこなった際、こうした説明をすると非常に興味を持つそうです。

実は最近、レノボではパソコンの購入者の声を慎重に聞くように努めています。これはよりよい体験を得られたユーザーは、そのメーカーの製品を再び購入する、あるいはほかの人にも購入を勧める傾向にあるということに、あらためて目を向けたためです。今はいかに丁寧に一人一人のユーザーと向き合うかがレノボの課題になっています。そこで「石橋をたたく方式」のNECPCの手法に強い興味を持ち、実際に一部の工場では「NECPC方式」の品質管理が始まっています。やはり「カイゼン」は世界の言葉なのですね。

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