「瓶のふた開け」にも困る老後を支える人たち タニタ食堂を手がけた前会長が今熱中する

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そして、今回、初めてサービスをされる側になった。熱海の別荘に運んだ荷物の荷ほどきや整理を依頼したのだ。

よくやってくれていた。作業をひととおりみていたが、よく管理されているし、スタッフをよくまとめていた。木箱に梱包された荷物ばかりで、ハードな作業だったと思う。

どうやって開けようかと苦戦している時間もあったが、ちゃんとやってくれた。最後のゴミや段ボールの始末もきちっとしている。見積もり以外にやってもらった部分もありますから。これはリピートしたくなると思います。

有料老人ホームなどにもサービスを開始

ただし、前述したように、谷田さんは御用聞きを「ビジネスモデルとしてまだ完成されていない」と考える。

事業を支える柱になるようなものを、もう1つ考えていかなくてはと古市さんには伝えています。

会長の注文に応えるように、御用聞きは12月から法人向けサービスに力を入れ始めた。軸に据えるのは、社会課題の解決だ。

第1弾として介護付有料老人ホーム「杜の癒しハウス文京関口」(社会福祉法人三幸福祉会)で、「施設内御用聞き」をスタートさせる(1回3時間から)。施設からはもちろん、入所者個人の頼みごとを担う。それまでは、入所者の買い物代行を事務員がこなしていたが、それをやることで本来の業務が滞り仕事が増えていた。そういった職員の働き方改革を支えることにもなりうる。すでに予約が8本入っている。

素晴らしいですね。個人より法人のほうが悩みも複雑でしょうし。あとは、古市君と同じマインドの人をどう育てるか。どんな事業も、肝は人ですから。

タニタの経営を離れても、人々がどうしたら健康になれるかを考え続けた谷田さん。その後押しを受けながら、超高齢社会のなか「人と人をつなぐサービスのインフラ」を追求する古市さん。今後は都内のみならず、愛知県名古屋市への進出も準備中だ。彼らの今後から目が離せない。

島沢 優子 フリーライター

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しまざわ ゆうこ / Yuko Simazawa

日本文藝家協会会員。筑波大学卒業後、広告代理店勤務、英国留学を経て日刊スポーツ新聞社東京本社勤務。1998年よりフリー。主に週刊誌『AERA』やネットニュースで、スポーツや教育関係等をフィールドに執筆。

著書に『世界を獲るノート アスリートのインテリジェンス』(カンゼン)、『部活があぶない』(講談社現代新書)、『左手一本のシュート 夢あればこそ!脳出血、右半身麻痺からの復活』(小学館)など多数。

 

 

 

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