1960年代のロンドン。ビートルズは音楽で世界に多大なるインパクトを与えていました。その頃、オックスフォード大学で歴史学を専攻していたある学生がいました。彼は、どうしても音楽を学びたくてオックスフォードを中退。
一応の楽才があったのでしょう、王立音楽大学に入学を許されました。彼の名は、アンドリュー・ロイド⁼ウェバー。英国の著名なクラシックの作曲家にしてロンドン音楽大学の学長であったウィリアム・ロイド⁼ウェバーの息子です。が、アンドリューは、クラシックの枠に収まりきれませんでした。
彼が強い関心を払ったのはイエス・キリストの生涯でした。そこには、若き芸術家の創造力を喚起する物語が満ちていました。アンドリューの音楽的関心に明確な形を与えるためには、適切に選択された言葉が不可欠です。運命的な邂逅があります。作詞家ティム・ライスとの出会いです。アンドリュー18歳、ティムが22歳です。
意気投合して作った初ミュージカル作品は長くお蔵入りします。が、旧約聖書から題材を取った第2作『ヨセフ・アンド・ザ・アメージング・テクニカラー・コート』が評判となって、第3作『ジーザス・クライスト・スーパー・スター』へとつながっていきます。
さまざまなジャンルを超えて革命的に
1970年にアンドリューとティムは、オリジナル・ロンドン・コンセプト・レコーディングと呼ばれる音盤を発表します。まだミュージカルとして上演する前に発表するなんて型破りなことをやっています。アンドリュー22歳、ティム26歳。まさに、“恐るべき子供たち”です。
聴けば、音楽は革命的です。ロックあり、クラシックあり、フォークあり、ジャズありです。しかも統一感があります。アンドリューの持てる創造力と技量を遺憾なく発揮しています。そして、作詞家ティムの才能も爆発し、メロディーと歌詞が完璧に融合します。すべてのせりふは歌われて、キリスト最期の7日間が立体的に描かれています。
ナチュラルに歪んだエレキギターで始まる「序曲」からテンションが高まります。ここでは、イエスは聖人君子ではなく1人の悩める青年です。「ゲツセマネの園」においてイアン・ギランが中音域から超ハイトーンまで駆使して歌う苦悩と諦観は圧巻です。ヴォーカリストの真価ここにありです。この後のディープパープルの活躍の序章ともいえます。
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