蛤ラーメン「金色不如帰」一つ星獲得の道のり

ミシュランガイド東京2019に追加された名店

こうしてラーメンの改良を重ね、3年目で1日40~50杯、4年目では土日は100杯以上出るようになってきた。

「不如帰」が人気店になっていくことで、蛤などの新たな食材がラーメン界でも広まっていき、次第に食べ手にも理解されていった。

2014年10月には店名を「SOBAHOUSE 金色不如帰」に改名。味を磨いて不如帰を「金」にしようという思いからだった。

その年の年末、「ミシュランガイド東京2015」にラーメン部門が新設。「金色不如帰」はビブグルマンに輝いた。ついにこの時が来た、山本さんはそう思った。そこからは星しか目指していなかった。

受賞したお店の多くは醤油ラーメンの清湯系(あっさりとした透明なスープ)だったが、山本さんは「東京ラーメンというのはそもそも清湯の醤油ラーメンが始まり。だから歴史的にも清湯が評価されるのは自然」と分析する。

ここから山本さんはさらにラーメンを改良する。

一般の人には入っている食材がわからなくともおいしく食べてもらえる一杯で、さらに食のプロをうならせるものを目指した。体が欲するようなダシ感。詳しくは企業秘密だが、ダシの奥行きを出すために5段階でうま味を感じられる構成に仕上げた。

翌年には「Japanese Soba Noodles 蔦」が一つ星を獲得、そしてさらに翌年「創作麺工房 鳴龍」が一つ星を獲得していった。後輩にあたる店主たちが輝いている姿を見て、悔しかった。

自家製麺を手がけるためにお店を移転

ここでさらに改良すべき点が出てきた。それは麺だった。これまで手がけていなかった自家製麺に乗り出すことにした。

「SOBAHOUSE 金色不如帰」の外観(筆者撮影)

そのためにはスペースが必要だった。幡ヶ谷の狭いお店では麺は打てない。さらに、スタッフが休憩できるスペースや、仕込みをしやすい環境を作る必要もあった。こうして山本さんはお店の移転を決意する。

2018年5月、新宿御苑前にお店を移転。念願の自家製麺もスタートした。製麺所に注文していた時も指定した粉、配合で麺を作ってもらっていたが、自分で打つことによって日々のコンディションに合わせて配合をいじることができるようになった。そして麺の原価が下がるので、その分スープにお金をかけて次のステージに上がることもできた。

ミシュランの盾の数々(筆者撮影)

ラーメン評論家やラーメンファンの間では「今年こそ『金色不如帰』が星を獲るのではないか」とささやかれていた。逆に山本さんのなかでは「これで獲れなかったら無理なのかな」という気持ちもあったという。こうして「金色不如帰」は4年連続ビブグルマンを獲得した後、待望の一つ星となった。

山本さんは海外にこの味を広げていきたい考えを持っている。「金色不如帰」は現在カナダとシンガポールに海外出店しているが、この後もシンガポールに3店舗、カナダに1店舗の出店を控えている。

ここで課題となるのは、味を受け継ぐスタッフの養成だ。今の体制だと日本では2~3店舗が限界だという。山本さんの舌の感覚や味づくりを、体系化、言語化し、スタッフが会得できなければ、遠く離れた海外への大きな広がりは期待できない。

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