メイ首相は党首不信任案否決でも薄氷踏む 次の関門はEU離脱合意案の採決や内閣不信任
英国のEU(欧州連合)離脱をめぐる問題で、テリーザ・メイ首相の保守党党首不信任を求める署名が15%以上(48名以上)集まり、12日夕方(日本時間の13日未明)党所属下院議員による投票が行われた。結果は、信任200対不信任117の多数で、同氏の党首(首相)残留が決まった。
保守党の内規により、党首不信任手続きは向こう1年間はできない(1年に1回に限られる)。過去にはマーガレット・サッチャー首相が党首不信任を乗り切った後に退陣に追い込まれた例もあるが、ひとまず離脱までは党内からのメイ降ろしの動きは封じ込められることになる。
投票に先駆けて、メイ首相は2022年までに行われる次の総選挙に党首として臨まない(現議会任期で首相を退陣する)意向を示唆した。離脱を決めた段階でメイ首相は自ら辞任し、後継首相に将来関係協議を託す可能性が高い。
EUと再交渉は成果なく、合意案否決の恐れ
11日の採決を見送ったEU(欧州連合)との離脱合意案については、北アイルランド国境管理のバックストップ案(国境問題が解決するまで一時的に英国全体が関税同盟にとどまる)が半永久的に続きかねないとの保守党議員内の不満の声を踏まえ、これが時限的な措置であるとの政治上かつ法律上の確約をEU側から取り付けることを約束した。
メイ首相は党首(首相)続投を手土産に、13-14日の欧州首脳会議に臨むことになる。ただ、EU側はメイ首相が置かれた厳しい政治情勢に配慮しつつも、11月25日の首脳会議で交わした離脱合意の再協議を否定している。バックストップが恒久的な措置ではなく、どこかの段階で終了する意向であるとの声明を発表することがあったとしても、それを法律で担保する形の約束は望めない。ほぼ手ぶらで帰国することになりそうなメイ首相に対して、英国内で再び厳しい批判が待ち構えていることは容易に想像できる。
今回の投票では、党首(首相)交代による協議停滞や総選挙のリスクを恐れて、メイ氏に信任票を投じた議員もいた模様だ。それでも党内の117名が党首(首相)交代を求めたわけで、同氏がEUと交わした合意案に対する反対票はこれをさらに上回る恐れがある。閣外協力する北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)も合意案に反対しており、延期された合意受け入れの是非を問う下院採決は引き続き大差で否決される公算が大きい。
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