「グーグルフォト」に感じる漠然とした恐怖 どんどん使い勝手が向上しているが…

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

反対に、妻が撮った子どもの写真は私にシェアされる。即時に、何も考えなくても、私たちはそれぞれに子どもたちの写真を全部持つことになる。そして、それらの写真を安全に保存できるだろうかという不安も消え去った。

またグーグルは、昔を思い出すチャンスを毎日のようにもたらしてくれる。大量の写真の中から特定の写真を探してくる力は驚異的だ。「Then and Now(昔と今)」というシリーズでは、同じ人やグループが、異なる時代に同様のポーズをとっている写真を探してくる。たとえば、子どもたちが新学年に進級したときの、今年の写真と去年の写真。エンパイアステートビルの前で最近撮った写真と10年前に撮った写真などだ。

AIが選び出した記憶が自分の物語になる

今年10月には、グーグルは新しい家庭用のデバイス「ホームハブ」を発売した。声に反応して作動し、スクリーン上には懐かしい写真のスライドショーが、終わることなく映し出される。つい見入ってしまう。ホームハブを自分のオフィスに導入してから1週間が過ぎたが、写真の感じ方が大きく変わった。写真が生き生きと蘇ってくるのだ。

しかし、私はグーグルフォトをやめられないと同時に、グーグルフォトがもたらす未来について、漠然とした恐怖をも感じている。いくつもの社会学の研究で、写真によって人間の記憶が大きく変わることが示されている。

ある研究によると、何も考えずに写真を撮り続けると、周囲で起こっている出来事を思い出す能力が低下するという。写真はまた、自分についての理解を形成し、新たな記憶をつくり出すことさえある。偽の写真によって、実際には起こらなかったことを、本当の出来事だと思い込ませることもできるのだ。

こうしたことを踏まえると、AIが選び出した記憶が、私たち自身の物語をどう形作っていくのか心配になる。サマラや彼女のような子どもたちが、ある日グーグルフォトなどでつくられたムービーを見て、それを基に自分の子ども時代について何らかの観念を持つようになる。そのムービーは、広告収入によって運営される営利企業が所有する機械が、どんなシーンを見せ、何を隠すかを選んでつくり出したものなのだ。

現在のところ、何の災いも生じていない。グーグルフォトのムービーは輝くように明るい。だが、誰が語るかによって人の歴史が変わるなら、私たちはグーグルフォトによって新たな世界に足を踏み入れることになる。

グーグルの機械たちはいま、人間世界をどんどん解明している。現実を可能な限り深く掘り下げている。私たちはカメラだけでなく、AIからも逃れることができない。

(執筆:Farhad Manjoo、翻訳:東方雅美)
© 2018 New York Times News Service

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事