「グーグルフォト」に感じる漠然とした恐怖 どんどん使い勝手が向上しているが…
しかし、誰がソフトウェアに泣かされることなど想像するだろうか。その意味で本当に不意打ちだった。インスタグラムやスナップチャットなどに掲載された写真に感動することはあるかもしれないが、グーグルフォトはソーシャルメディアではなく個人を対象としたメディアだ。大量の個人的なスナップ写真を保存しておくデータベースとして、3年前に始められたサービスだ。このサービスを動かしているのは主に機械であり、人間や「いいね!」を押すなどの行為ではない。
それでも、グーグルフォトは最も心に響くテクノロジーの1つとなっており、私も日常的に使っている。グーグルフォトはとても便利で、撮影した大量の画像の保存と検索という頭痛の種をなくしてくれた。その点で非常に注目すべきツールだが、もっと注目すべき点がある。それは人間が今後、写真を通じて自分自身をどう理解していくかを予感させるツールであるという点だ。
撮りっぱなし問題の解決を狙う
人工知能によるキュレーション(情報の収集や整理)に重点を置いているグーグルフォトは、一人ひとりにロボットの歴史学者が存在するような時代の始まりを感じさせる。そこでは、アルゴリズムが思い出をキュレーションし、その人の非常に個人的な経験を物語にする。私たちが撮影する何兆もの画像は、そのための原材料となるのだ。将来的には、ロボットが私たちのすべてを知っていて、ロボットが私たち一人ひとりの歴史を語るようになるだろう。
グーグルフォトは最初、グーグルプラスの一部としてこの世に現れた。グーグルプラスはグーグルのソーシャルメディアだが、うまくいかなかったため閉鎖されることが決まった。数年前に、ソーシャルメディアが自社の強みではないことを認識すると、グーグルはグーグルフォトを一から設計し直すことにした。
その段階で、次の3点を実現することが考えられた。
まず、写真をほぼ容量無制限で、基本的には無料で保存できるようにすること(お金を払えば、より解像度の高い写真を保存できる)。そして、写真をクラウド上に保存し、どこからでもアクセスできるようにすること。さらには、グーグルの名高いAIを使って、スマホ時代の大きな問題、つまり撮った写真をほとんど見返すことがないという問題を解決することだ。
グーグルのバイスプレジデントで、グーグルフォトの開発チームを率いたアニル・サバルワルは言う。「写真を撮ったときのことを思い出したり、回想したりすることがない。素晴らしい休暇に出かけて、美しい写真を何百枚も撮るのに、それを見返すことがないのだ」。
2015年にサービス提供を開始すると、グーグルフォトはすぐに利用者をほっとさせた。たとえば、グーグルフォトでは顔認証技術により自動で写真をシェアできるので、私が子どもの写真を撮ると、グーグルはそれを認識して写真は妻にもシェアされる。