保育無償化が「誰得か」よくわからない現実

アンケートから見えた保育行政現場の懸念

待機児童対策や保育の質への悪影響は、保護者としては絶対に避けてほしいものです。保育の質では、保育士の処遇改善による人材確保が最も重要です。

また、質の向上と保育士の負担軽減策の1つとして、3歳児の人員配置(保育士1人当たりの子どもの人数)を20対1から15対1にすることが決まっていますが、消費税10%が先送りになったことを理由に先送りされたままです。

加えて、もともと費用の10割が基礎自治体負担となっている公立保育所への影響も心配です。無償化費用負担が公立保育所の民営化、職員の非正規化などの影響を及ぼすとした回答は25。現時点での影響について回答した60市区の42%に及んでいます。

財源論をめぐり現場は反論

公立保育所は――(1)民間保育施設の突然の休園・廃園などの非常時の受け皿になる、(2)そこで培われた人材が民間保育施設の指導・支援や監査に活用される、(3)養育困難も含む多様な家庭の受け入れ・支援を率先する、(4)災害時に被災世帯の保育や子育て支援を行う――など、その重要性が増しています。

無償化がなくても民営化を進める方針の自治体もありますが、公立保育所の存続をいっそう困難にするような施策には大きな問題があります。

今回の無償化で、これまで自治体が独自財源で保育料軽減を行ってきた分が浮くはずだという指摘もありますが、「公立保育所の費用増大で帳消しになる」と現場は反論しています。

地方交付税で補填することにも、こんな反対があります。

地方交付税で補填されると言っても、臨時財政対策債の発行可能額が増えるばかりで、将来世代のことを考えると臨時財政対策債を抑える必要があり、保育等の費用を確保できたとは言えない

国の地方交付税の財源はすでに不足しており、将来、地方交付税で返済する予定の地方債で補っている状態なのです。

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