「壮大な謀略」に気づいた、サウジアラビア
ところが、である。どうやらこうした「隠されたシナリオ」にサウジアラビアが気づいたようなのである。先ほどの「合意」が生じてから1日以上も経ってからサウジアラビア政府は公式見解を発表。非常に用心深い言い回しを使いながら、この「合意」を支持するとした。
中東における地政学リスクの炸裂は確かに大仕掛けであり、これが発生した場合の効果は金融マーケットにおけるヴォラティリティの演出という意味では絶大だ。だが、何といってもこれに関わる利害関係国が多すぎるところに最大の問題がある。
マーケットを飛び回るヘッジファンドや投資銀行たちが織り成すポジションを見ていると、総じて今年(2013年)の8月後半以降、この「中東開戦リスク」に賭けてきていたことがよくわかる。「すわ開戦」という山場がこれまで何度も何度も訪れ、その度にマーケットは乱高下してきた。
だが賢明なるアラブの盟主は明らかに「罠」に気づいているのである。米国、イスラエル、そしてイランやフランスなどが大立ち回りを演じても、静かにそれを見守っている。その結果、このままでは金融マーケットでヴォラティリティが発生せず、実体経済はデフレ縮小化へと突入してしまうのである。米欧からすればこれは実にまずい、まず過ぎるのだ。
「北朝鮮カード」は、「中東カード」と表裏の関係
そこで今度は、中東とカードの「裏表」の関係にある北朝鮮の出番ということになってくる。―――先月(11月)22日、米国務省は突然、85歳になる元米軍兵士が10月より北朝鮮当局に拘束されていることを発表した。その直前にサンノゼの地方紙にどういうわけか記事が掲載され、それを追認したのだ。
その直後の同月25日、今度はデービス米北朝鮮問題担当大使が訪日。我が国に対して「北朝鮮の核・ミサイル開発の進展阻止を目指し、日米韓に加えて中国と連携して圧力を強める方針」を確認させたのである。要するにかつての小泉訪朝(2002年)の時のように、「日本だけが抜け駆けをするのは許さない」というわけなのである。
北朝鮮が望んでいるのは、米国との二国間協議だ。そのためにこれまでも繰り返し仕掛けをしては米国をおびき出そうと躍起になってきた。しかし対する米国は全く乗ろうとする気配を見せていない。無論、時折「民間人」を派遣して様子をうかがうが、あくまでもそれは形式的なものであり、北朝鮮が望んでいるような、米国との「名誉ある大団円」には程遠いレヴェルにとどまってきたのだ。
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