デフレ脱却実現なら物価と金利はどうなるか 財政危機の警報は鳴りにくいから危ない

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家計金融資産残高と国債残高とを比較して、国債残高が家計金融資産残高に近づいていて、このままでは上回るようになるという議論も見かける。しかし、対外債務が大きく膨らまない限り、国債残高が家計金融資産を超えるということが起こる可能性は低いだろう。

究極的には家計が企業を所有していると考えれば、家計は国債などのほかに企業の資産と対外純資産の大部分を保有していることになるからだ。国債は保有者にとっては金融資産なので、国債発行額を増加させた分だけ減税を行い、家計がそれを貯蓄してしまうと、国債残高と家計貯蓄残高の両方が増えることになり、極端な場合には両者の差が変わらないこともありうる。

家計金融資産残高は2017年度末で1831兆円、住宅ローンなどの債務を除いた純資産でも1513兆円あって、貯蓄率が低下傾向にある中でも株価の上昇などによって家計金融資産残高の増加傾向は続いている。家計金融資産残高を国債残高が上回るということはなかなか起きそうもなく、これも財政危機を回避するためのシグナルにはならないだろう。

経常収支の赤字化は警報として遅すぎる

ギリシャのように財政赤字の資金調達を海外からの資金に頼るようになれば財政危機に陥る危険性が格段に高まるのは確かだ。「日本は経常収支が黒字で、国債発行は国内貯蓄で賄われているのでギリシャとは違う」という説明がよく聞かれる。経常収支が黒字か赤字かという違いが、財政危機に陥るかどうかの差を決めているという見方がされることが多い。

東日本大震災の影響もあって、2011年度に貿易・サービス収支が赤字化し、2013年度には貿易・サービス赤字の拡大によって経常収支の黒字幅が2.4兆円にまで縮小した際には、財政破綻を回避するためにも経常収支の黒字を維持しなくてはならないという主張も見られた。

しかし経常収支が黒字で計算上は国内貯蓄で国債発行を賄えるはずであっても、多くの投資家が日本国債の購入に後ろ向きになってしまい、日本国内から大量の資金が海外に逃避すれば、通貨危機を伴った財政危機が起こる可能性がある。財政危機を懸念して、多くの人が資産を海外に移すということは過去に通貨危機が起こった国ではよく見られた。

通貨が下落すると人々はますます海外に資産を逃避させようとするが、政府による外貨取引のコントロールが行えない日本では、いったん民間資金が海外に逃避を始めたら、悪循環が止められなくなるおそれが大きい。経常収支の赤字化というシグナルは、点灯するのが遅すぎて、財政危機を回避するのには役に立たないだろう。

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