史上最悪規模「カリフォルニア火災」のリアル 現地取材でわかった避難民たちの厳しい生活

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国勢調査によれば、マリブ市内の住宅の平均相場は約180万ドル。1ドル113円で円換算すると2億340万円だ。隣の住民と壁1枚隔てたアパートに住む多くのロサンゼルス市民たちからすれば、山や海を一望できる場所の一軒家に住むマリブ市民たちは、「自分たちとは別世界のセレブ」の印象が強い。

サーファーたちが波乗りを楽しむマリブの美しいビーチの横にある地元のショッピングセンターには、高級ブランド店やグルメ食材の店が軒を連ね、パシフィック・コースト・ハイウェイ沿いには、人気の高級和食のレストラン、NOBUもある。

集会に参加した避難民たち(筆者撮影)

物価は高く、マリブ市のガソリンスタンドのガソリンの価格は、LA市内よりも通常、1ガロン当たり1ドルは確実に高い。マリブ市内の多くの住宅は、防犯セキュリティ会社と契約し、邸宅の庭先に植え込まれた警告サインには「侵入者には銃を携帯したガードマンが対応する」と記されているのが普通だ。

人種の多様性が全米トップレベルで豊かなロサンゼルス市とは対照的に、マリブ市の人口の約90%は白人だ。有色人種の住民はほとんどいない。当然、避難集会に集まった老若男女のほとんども白人だった。

火が回るのがあんなに早いとは!

「何とか逃げ出せたけど、自宅は全焼してしまった」

「サービスドッグ」のタグのついた犬と共に、避難集会に参加した住民(筆者撮影)

そう語るのは、マリブ住民で、ドイツ出身のマティアス・バンクさんだ。「昨日の午前中、急に自宅の電話もインターネットも通じなくなった。火は近くに迫っていなかったし風もなかったから、数時間は大丈夫だと思っていた。でも、あっという間に炎が迫ってきた」。

バンク氏は慌てて自宅の屋根の上によじ登ると、隣家の住民たちに避難するように大声で叫んで伝えた。そして、身の回りの物だけを手にクルマに飛び乗った。振り向くと最近改装したばかりの築7年の自宅が、瞬く間に火に包まれていた。

「あれもこれも持ち出せばよかった、もう少し早く準備していればと後悔することだらけだけど、火が回るのがあんなに早いとは、まったく想像できなかった」(バンク氏)

突風とともに猛烈な勢いで押し寄せる炎。それがこのカリフォルニア火災の大きな特徴だ。州北部の町、パラダイスでは、逃げる途中、車の中で焼死した住民も複数いた。

移動できるはずの車の中で焼死してしまうのはなぜなのか。消防の専門家に聞いてみた。

避難民集会には消火の指揮を執るインシデント・コマンダーを含め、消防署の隊員たちも数人参加して状況説明した(筆者撮影)

「突風の勢いは時には時速70マイル(約112キロ)にも達する。だから、車で走っていても、高速で迫ってくる炎が、竜巻のように襲いかかってくると逃げられない」

そう語るのはロサンゼルス郡消防局のセクション・チーフのケンイチ・ハスケット氏だ。

「誰しも、強制避難の時間のギリギリまで家にとどまって荷造りしたいのはわかるが、必要な薬と免許証だけを持ってすぐ逃げるように、われわれ消防隊は各家を回って伝えている。風の勢いがすさまじく、命を守るには早急に避難するしかほかに手がないから」とハスケット氏。

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