史上最悪規模「カリフォルニア火災」のリアル 現地取材でわかった避難民たちの厳しい生活
「励ましの言葉はいらないから、今すぐ必要な情報をくれ!」
カリフォルニア州・マリブ市近隣の講堂を埋め尽くした1000人ほどの避難民の中から、怒りに震えた声が地元の政治家に向けて上がった。すると、「そうだ! 具体的な情報が欲しい」「そのために私たちはここに集まったんだ」という声が会場内から一斉に挙がりはじめた。
11月、アメリカ・カリフォルニア州で史上最大規模の火災が発生した。11月29日で確認された死者は88人、行方不明者は約200人だ。
同時多発的に州各地で火の手が拡大する中、富裕層が多く住む同州マリブ市の住民たちにも今月半ばには強制避難命令が下った。人口約1万3000人のマリブ市住民のうち、無事に避難できた人たちのほとんどが、隣の市の高校の講堂で開かれた緊急避難集会に参加した。
市議会議員らが壇上で語る「私たちは、今できるかぎりのことをやっています」というスピーチを、最初の30分間、避難民たちはじっと辛抱強く黙って聞いていた。
足らない情報が不安を増幅させる
だが、強制避難命令がいつ解除されるのか、いつ消火活動が終わって自宅に戻れるのか、さらに自宅が全焼したのか、無事なのかもわからず、具体的な情報を与えられない避難民たちのストレスは、しだいにピークに達した。
「災害時にチアリーダーはいらない。現場を統率できる真のリーダーが必要なんだ」と叫ぶ住民もいた。自らも避難民であり、火災で自宅を失った市議会議員の男性が壇上で取り乱し、涙する姿もあった。
そんな時、ロサンゼルス郡のチーフ保安官のジョン・ベネディクト氏が立ち上がってマイクを握り、「皆さんが怒りに震えている気持ち、私にはよくわかります。ここまでひどい災害は、私も初めて体験しています」と静かに語ると、会場の混乱が少し収まった。
マリブ市は、ロサンゼルス近郊の太平洋沿いの自然豊かなリゾート地で、ハリウッド・スターや芸能人、富裕層が多く住む地区として有名だ。プライベートビーチつきの豪邸や、サンタモニカ・マウンテン沿いの高い丘の上の広い邸宅なども珍しくない土地柄である。
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