鉄道のきっぷに共通する「57.5ミリ」のひみつ 180年前のイギリスから受け継がれるサイズ
最近では、交通系ICカードで鉄道に乗る人がほとんどだ。交通系ICカードの寸法は前述の磁気カードとは異なり、85.6mm×53.98mmである。これはISO/IEC7810という、身分証明書カードの形状を定めた国際規格のうち「ID-1」という規格に基づいている。
これは交通系ICカードに代表される非接触ICカードだけではなく、クレジットカードや銀行のキャッシュカードなどでも使用されているサイズだ。1:1.618の「黄金比」と呼ばれる比率に近い。
日本の交通系ICカードで使われている「FeliCa」は、ソニーが開発した技術である。まずは香港で1997年に導入され、2001年にはJR東日本の「Suica」に採用されたことで日本でも広まっていった。鉄道以外に、「楽天Edy」「nanaco」「WAON」などの電子マネーや、会社などの入退室の鍵を兼ねた身分証明証にも使用されている。
これらのカードと同じサイズのクレジットカードやキャッシュカードといった磁気カードの技術は、立石電機(現在のオムロン)によって確立された。カードの裏面に貼った磁気テープに情報を記録し、それを機械に読み込ませるというシステムは、日立マクセル(現在のマクセルホールディングス)との共同開発である。
磁気カードによるオフラインの現金自動支払機は1969年、オンラインのシステムは1971年に稼働した。磁気テープに情報を記録し、機械で読み取る技術が開発されたことによって現在見られるようなオンラインのATMも可能になり、多くの人がキャッシュカードを持つようになった。
サイズの共通化が生んだ便利さ
この際のクレジットカードやキャッシュカードの大きさ――黄金比に基づく大きさ――が、現在の交通系ICカードの大きさのもととなっている。従来の磁気カードとは異なるサイズとなったが、クレジットカードなどと同じサイズとなったことで新たな便利さを生んだ。交通系ICカードとクレジットカードの融合だ。
2003年には、Suicaの機能を搭載したクレジットカードである「VIEW Suicaカード」が登場。交通系ICカードとクレジットカードとの一体化を果たした。銀行系のクレジットカードでもSuicaやPASMO搭載のものが次々と現れ、交通系ICカードをID-1規格にしたことの成果が表れている。
イギリス由来のサイズがいまだに続いている切符。日本が開発した技術やそれによる規格が由来となっている交通系ICカード。サイズにはそれぞれ、理由があるのだ。
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