日産の「日本軽視」を生んだゴーン采配の中身 就任初期は新型車をバンバン投入していたが

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とはいえノートとセレナは好調だ。そして2018年1~10月のメーカー別国内販売ランキングでは5位でも、登録車に限ればトヨタに次いで2位に浮上する。なぜこうなるのか。

いちばんの理由は、今では軽自動車が国内販売の37%(2018年1~10月)を占めるからだ。総合順位が3位のスズキ、4位のダイハツは、いずれも軽自動車が中心のメーカーになる。2位のホンダも今ではN-BOXの人気が高く、軽自動車がホンダ車全体の49%を占める。

そのためにホンダを含めて登録車の売れ行きが低く、日産が登録車部門の2位になった。ただしトヨタと登録車の台数を比べると、日産は同社のわずか29%だ。一強多弱の後者に含まれるが、登録車の2位であることに違いはない。

ノートやセレナが「販売No.1」になった理由として、売れる日産車がほかにないことも挙げられる。前述のマーチ、キューブ、エルグランドなどは設計が古く、ティーダ、ウイングロード、ラフェスタ、デュアリスなどは販売を終えて長い期間が経過した。

そうなるとこれらの車種のユーザーは、乗り替えるクルマがなくて困ってしまう。そこで2016年にe-POWERを加えたノート、同年にフルモデルチェンジを受けたセレナ、2013年に発売されながらハイブリッドの追加などで相応の人気を得ているエクストレイルなどを購入している。日産との付き合いが長く、他メーカーに乗り替えたくないユーザーが、消去法的にこれらの日産車を選んでいる事情があるわけだ。ユーザーの気持ちを考えれば「販売台数No.1」とは喜べない。

ゴーン後の日産はどうなるのか

さて、ゴーンがいなくなった後の日産はどうなるのか。ルノーが日産に43.4%の出資をしている以上、日産側の思惑どおりに話が進むとは思えないが、傷つけられたイメージを回復するには顧客本位の活動を地道に続けていくしかない。

具体的には日本の市場に適した商品の投入と、ユーザーに向けた良心的なサービスだ。日産は2011年以降、国内市場を軽くとらえ、揚げ句の果てに今回の不祥事に至った。「日本の日産」を商品企画から改めて見直したい。

そして日本には、今でも多くの日産ファンがいる。日本のための商品開発(国内専売車とは限らない)を再び活発化させれば、苦境を乗り切る突破口が見えてくるだろう。(一部敬称略)

渡辺 陽一郎 カーライフ・ジャーナリスト

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わたなべ よういちろう / Yoichiro Watanabe

1961年生まれ。自動車月刊誌の編集長を約10年務めた後、フリーランスのカーライフ・ジャーナリストに転向。「読者の皆さまにケガを負わせない、損をさせないこと」が最も重要なテーマと考え、クルマを使う人たちの視点から、問題提起のある執筆を心掛けている。

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