「恋愛スキルゼロ」44歳男性の実直すぎる婚活

映画「モテキ」を見て「俺にもできるんじゃ」

読書好きな信一郎さんは猫町倶楽部にも参加し、そこで直美さんと出会う。作家やライターの話で盛り上がる中で、筆者の話題にもなり、一緒にスナック大宮に行く約束をした。自然な流れである。

初デートでは美術展に行き、その日の夕方には信一郎さんは告白を試みる。恋愛に不慣れという割にはスピーディな男性だ。直美さんはニヤニヤしながら当日の様子を証言する。

「フードコートみたいなところでお茶をしていたら、座っているイスをなぜか私のほうに近づけて来るんです。モジモジしながら。寒いのかな?と思いました。その後に居酒屋のテーブル席に座ったのに、対面ではなく隣に座ろうとする。おかしな人ですよね」

信一郎さんは対面では恥ずかしすぎて告白ができなかったのだ。横に座って前を見ながら、「僕と付き合いましょう」とようやく言えた。百戦錬磨の直美さんも誠実そのものの信一郎さんに心惹かれていたが、「ありがとう。でも、今はお酒を飲んでいるので、日を改めて告白してね」と返した。明確なOKサインを出しながらも、酒席でのあいまいな関係は許さない。すごいぞ、直美さん。信一郎さんとの男女関係構築スキルの差は歴然としている。

信一郎さんは恋愛カウンセラーにも相談し、翌週のデートで改めて告白をした。皇居前を2人で散歩しているとき、急に直立不動になり「僕と付き合ってください」と直美さんに頭を下げたのだ。断られたら切腹しそうな光景である。直美さんは笑って承諾した。

「僕は突然現れた異物」

付き合い始めてしばらくして、信一郎さんは直美さんの自宅に挨拶に行った。直美さんは千葉県内に中古マンションを購入済みで、母親と息子との3人暮らしだ。就職して一人暮らしをしていた息子は仕事を辞めて自宅に戻っている。ただし、母親の恋人である信一郎さんを拒絶することはなく、「今後はどうするつもりなのか」と淡々と聞いたらしい。

困惑したのは母親のほうだ。世帯主の直美さんが結婚して出て行ってしまったら、自分と孫はどうやって生活すればいいのか。今まで母子で助け合って暮らしてきたのだから当然の不安だと信一郎さんは感じた。

「僕は突然現れた異物なので、拒絶反応をされるのは当たり前です。結婚をするためには時間をかけていろんなことを乗り越えなければいけないと思っています」

直美さんを家族から奪うつもりはないことを直美さん経由で伝えると、母親は落ち着きを取り戻し、信一郎さんを気に入ってくれた。今では直美さんよりも母親のほうが信一郎さんとたくさんおしゃべりをしているという。

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