住む場所、仕事、子どもの有無、家事の分担、親類や友だちとの付き合い方――。結婚とは赤の他人と共同生活を始めることなので、話し合って折り合いをつけるべき重要項目がたくさんある。
すべての項目が一致したとしても、生理的に無理だったり生活観が合わない相手と夫婦になるのは難しい。年齢を重ねるにつれて、「自分はこのように暮らしたい」「こんな人とは一緒に寝られない」といった価値観が固まってくるので、よほどの努力をするか大変な幸運に恵まれるかのどちらかではないと結婚に至りにくくなる。晩婚さんの現実だ。
東京郊外の高級住宅地に住む小林里奈さん(仮名、41歳)は、昨年末に結婚したばかり。最寄駅のショッピングモール内にある喫茶店で待ち合せると、白と水色のストライプ柄のブラウスと巻き髪姿の里奈さんが現れた。
私の人生設計、完全にプラン倒れです
スリムで美人、笑顔も話し方も柔らかく、周囲の男性からもモテてきた。20代の頃はオリンピック選手、商社マン、広告マンと交際。30歳で7歳下の相撲取りと出会い、結婚を視野に入れて4年間も付き合っていた。華やかな恋愛遍歴である。
「オリンピック選手の彼と知り合ったのは学生時代の合コンです。カッコ良くて、すぐに好きになりました。でも、海外遠征が多くて、私はそういうときに連絡するのを我慢してしまい、自然消滅しました。結婚したかったので親にも紹介していたのですが、『彼はあなたのことをそんなに好きじゃないと思う』と見抜かれていました」
里奈さんは今、実家近くのマンションに夫の達彦さん(仮名、42歳)と暮らしている。妊娠中でもあり、親が近くにいることは大きな安心材料だ。結婚相手を決めるときも、両親が賛成してくれるかどうかは重要であり続けた。
「父は小さな会社を経営していて、今は弟が継いでいます。母は専業主婦で、私には小さい頃からいろんな習い事をさせてくれました。大学を出て、2、3年働いたらいい人と結婚して母のような専業主婦になって子育てに専念する。それが私の人生設計だったのですが、完全にプラン倒れです」
自嘲ぎみに笑う里奈さん。商社マンの恋人とは彼の中国駐在、広告マンとは東南アジア駐在が別れの原因だった。どちらからも「結婚してついて来てほしい」と懇願されたが、里奈さんは断ってしまった。
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