「町のパン屋」は今、ここまで進化している

ブームに左右されないパン屋に必要な要素

当初、割田氏はあんパンやクリームパンなどの「日本のパン」だけで勝負するつもりだったが、販売スタッフの女性から「カンパーニュもやりませんか?」とオープン3日前に言われて導入。初日から100グラム140円の量り売りにした大きなカンパーニュ「マルディグラ」3本を売り切った。その結果、バゲットなどのフランスパンから食パン、菓子パン、総菜パンまでバラエティ豊かな品ぞろえの店となった。

フランスパンから食パン、総菜パンまでバラエティ豊か(編集部撮影)

ビーバーブレッドが面白い、まさに「進化系」と言えるのは、フレンチベーカリーのバックグラウンドを持ちながら、日本の菓子パンや総菜パンにこだわりを持っているところだ。「日本のパンはすごく可能性がある。今後5年、10年でアジアから世界へ広まっていくのではないか。それをプレミアム感をつけて出す」と話す割田氏の言葉どおり、おなじみのパンにも一工夫したおしゃれさがある。

「普通」の菓子パンなどに、一工夫加えるのがビーバーブレッド流だ(編集部撮影)

クリームパンはカスタードクリームにリコッタチーズを加え、上にカシューナッツをトッピングした「クリームパンリコッタ」が1個250円。クッキー生地にカカオニブを練り込んだ「カカオニブメロン」が280円など、一般的なものより割高に設定している。プレミアム感が客を喜ばせると同時に、店にとっては利益率も高まる計算だ。

生産性を上げるための意外な工夫

レカン時代からのシェフの人脈を生かしたコラボ商品もある。たとえば、改装のため休業中の西麻布のビストロの名店、「サロン・デ・サリュー」の赤ワインで煮込んだカレーを包んだ「サロン・デ・サリューのカレーパン」を、350円で販売している。「スタッフはパン生地を作りたくて来ているのだから、コラボ商品を作ればカレーの具材を作らなくて済む。そういう手法はパン屋が生き残るためにもいい方法だと思う」と割田氏は言う。

ほかにも生産性を上げる工夫をしている。あんパン、メロンパン、カレーパン、クリームパン、塩パンなどの生地を共通にし、量も統一。こうすることで、週2回3時間しか入らないアルバイトのスタッフも、すぐにやり方を覚えて生地を扱うことができる。しかも、本人のモチベーションも上がり、即戦力になるので店にとってもありがたい。

アルバイトの中には、デザイナーやカメラマンのアシスタント、会社社長などもいる。必ずしもパン職人を目指すわけではない人が、パンの世界に魅力を感じて厨房で働いているのだ。しかも大半は女性だ。

仕事のやり方を工夫すれば、スタッフは必ずしもパン職人志望者だけでなくていい。パン屋の厨房は長く男の世界だったが、食べものを作るのが好きな女性も主戦力になれる。ビーバーブレッドの柔軟な労働スタイルは、人手不足の時代を生き残るパン屋の未来を示唆しているのではないだろうか。

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