黒字倒産も出るほど深刻な「採用難」への対処 地方・中小企業では人手不足が死活問題に

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人がいないから事業活動が継続できない。今、多くの中小企業がそんな大ピンチに見舞われています。人が集まりにくい業種の代表例は、飲食、接客・販売、流通・サービスといったところでしょうか。

飲食業では、大手チェーン店ですら、人が足りないために営業時間を短縮する、場合によっては店舗自体を閉めるということも起きています。苦肉の策としてアルバイトやパートの時給を上げても、その分を価格に転嫁すれば、売り上げが落ちるという悪循環も生まれている。事業拡大どころの話ではありません。

体力のある大手企業ならばまだ戦略を見直しながら持ちこたえることも可能でしょうが、中小企業の場合は、この人材不足がすぐに死活問題になってしまうのです。

外部環境の好転は期待できない

人口減少、とりわけ労働力人口の減少は今後もますます進んでいきますから、外部環境が好転することは期待できません。むしろ状況はさらに厳しくなっていきます。そのため、女性やシニア層を積極的に雇用する企業も増えていますが、それでも足りないというのが現状なのです。マンション管理、警備、清掃といった、シニア頼みの業界では、他業界でもシニア層を活用し始めたため、人材不足に悲鳴を上げています。

この危機的な状況の打開策として、外国人の雇用も進んできました。すでに居酒屋やコンビニエンスストアでは、アルバイトで働く外国人が非常に目立つようになりました。このほか、建設業や製造業、農業などでも外国人の雇用は進んでいます。

先日、北海道夕張市に取材に行った際、若者が流出し高齢化が進む中、名産品である夕張メロンの生産を支えていたのは外国人でした。高齢者には高温のビニールハウスでの作業が体力の面で厳しいのです。そのために外国人に頼る状況が進んでいるということでした。

日本は、従来、研究者や経営者など高度プロフェッショナルを除く単純労働の分野では、移民に積極的ではありませんでした。しかし、このように労働力不足が顕在化し、状況が切羽詰まってくる中で、国も外国人の受け入れに前向きになってきています。

では、単純労働における外国人の受け入れが、現在の深刻な人材不足を解消しうるでしょうか。私は、短期的にはこれもかなり厳しいのではないかと考えています。

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