池袋にひっそり建つ「小さな学園」の建築物語 自由学園明日館を360度カメラで探訪

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かつての礼拝部屋はカフェとして利用されている(編集部撮影)

今、全国各地で文化財的な建築を見学すると、建物の内部にはカフェがあったり、館内が教室や集会向けの貸しスペースになっていたりすることが多い。そのような動態保存の先駆的な例となったのが、まさにこの自由学園明日館だった。

明日館では、2001(平成13)年の保存・修理工事の完成の後は、入場料を取って建物を一般に公開。また建物内の貸出も行っていて、結婚式場として人気があるほか、その他のパーティや展示会にも用いられ、テレビドラマや映画、コマーシャル、ファッション撮影などもよく行われている。

道路を隔てた向かい側には、遠藤新設計の講堂があり、こちらは弦楽や声楽のコンサート、ピアノ発表会などに利用されている。校舎側の正面中央のホールは、女学校であった当時に生徒たちが毎朝の礼拝をしていた部屋だが、現在はカフェにもなっていて、大きな窓から前庭の緑が見える魅力的な空間だ。ここでお茶のひとときを過ごすことを目的に訪れている見学者も多いようだ。

月に1度、第3金曜日には夜間見学日があり、夜の明日館の雰囲気を楽しむこともできる。また、桜の季節には桜を見る会、夏の夜には芝生でビールを飲むビアテラス、11月にはボージョレ・ヌーボーを楽しむ夜、2月には暖炉をたいてクラフトビールを楽しむ夜などのイベントも行われている。講堂では月1回東京音楽大学の学生による無料のホリデーコンサートもあり、明日館では文化財を使いながら保存していく手法をますます充実させている。

鈴木 伸子 文筆家

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すずき のぶこ / Nobuko Suzuki

1964年生まれ。東京女子大学卒業後、都市出版『東京人』編集室に勤務。1997年より副編集長。2010年退社。現在は都市、建築、鉄道、町歩き、食べ歩きをテーマに執筆・編集活動を行う。著書に『中央線をゆく、大人の町歩き: 鉄道、地形、歴史、食』『地下鉄で「昭和」の街をゆく 大人の東京散歩』(ともに河出書房新社)『シブいビル 高度成長期生まれ・東京のビルガイド』(リトル・モア)などがある。

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