法的には「職業選択の自由」に反する可能性が高いが、帯同家族分の渡航費用や生活費の補助を出している企業が多いなどの理由もあり、暗黙のルール的に「NG」とされているケースが多い。
しかし、一部のそうした「帯同家族としてのメリット」を放棄してもいいから、働きたいという妻は増えている。
シンガポールで現地採用され、フルタイムで働くタカコさん(仮名)は、約1年前に夫の駐在でシンガポールにやってきた。当初は扶養家族だったので、夫の会社から渡航費などが出たが、タカコさん自身が現地で就職してからは、扶養家族であれば夫の会社から補填してもらえた一時帰国費用などは出ないという。「日本に戻る時も引き続き私が働いていれば渡航費などは出ないのではないでしょうか」と話すが、現在、夫が帰国となっても自分だけシンガポールに残って継続して働けるようビザの取得を目指しているといい、意に介さない。
会社によって、特に治安上危険が大きい地域などでは、扶養手当が国内にいる時よりも大きかったり、家族の分まで一時帰国費用が出たりと、帯同家族向けの手厚い福利厚生がある場合がある。妻が海外で働く選択をすれば、こうした権利は享受できない。これに加え当然、年収によって日本の税務上・健保上・年金上の扶養から外れる場合は自分で賄う必要がでてくる。
働く駐在妻が抱える課題
夫の転勤で東南アジアに住んでいるマミさん(仮名)は、夫の上司には「配偶者の就労は原則禁止」と言われていたが、現地でなんとか働けないかと模索。夫の会社に何度も問い合わせてみると、社内に配偶者が就労してもいい条件が記載されていることと、申請のための書類が存在することが判明した。
「夫と業務内容が競合しないことなどのほか、異動に危険が伴う発展途上国の場合は通勤は安全面をかんがみ、車を買うか借りるかして運転手も雇うか、勤務先に手配してもらうなどの追加条件がつきました」
マミさんの場合、日本の健康保険に加え、現地での健康保険も手厚いものを選びたかったため、現地での勤務先が付保する保険ではカバーしきれず、自腹で手配した。
「当然の制度とは思うのですが、この出費が痛かったです。安全面、健康保険面では、途上国での現地就労は当然給料も安いので、おとなしくしていたほうがいいとも思えました」と話す。
現地採用では駐在員向けと福利厚生がまったく異なったり、安い月給でしか雇ってもらえない企業も多い。そんななか、保険を自身でカバーしないといけないことについては、多くの「働く駐在妻」が口にする課題ではある。
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