インデックス運用を過度に信じてはいけない サルでも子どもでもプロ運用者に勝てるワケ

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長期投資という言葉の定義は曖昧だが、検証期間はちょうどキリがよいように、2000年9月末から2018年9月末までという期間設定をした。この18年の間、日経平均株価の構成銘柄に名を残し続けた企業はちょうど150銘柄だった。この150銘柄を市場ポートフォリオと仮定する。使うデータは上記期間の累積リターン(ネット配当)とする。

この150銘柄からランダムに120銘柄を抽出するボタンを作成し、3人の子どもたちにそれぞれボタンを押させ、3つのランダムポートフォリオを生成した。120銘柄にした理由は、前述のスマートベータ戦略のように、下位20%の銘柄を排除するアクションという作業を踏襲したからだ。もちろん、銘柄の排除がランダムに行われるというのが本検証実験の肝である。

気になる結果だが、この市場ポートフォリオの18年間のパフォーマンスが197%だったのに対し、ランダムポートフォリオはそれぞれ200%、204%、213%とすべてが市場ポートフォリオに勝ってしまった。どうやら、バートン・マルキールの主張は、少なくとも今回の検証実験においては正しかったことになる。

インデックスのリターンを改善する余地はある

今回の検証で改めて言えることは、こういうことだ。つまり、プロに高いコストを払っても、必ず市場インデックスよりも高いリターンを出してくれる訳ではないこと。そして、たまたまとはいえ、ランダムで作ったポートフォリオが3戦3勝してしまうことを考えれば、不確定なリターンのために必要以上のコストを支払うべきではないということだろう。

しかし、ランダムとはいえ、手を加えることでリターンが改善してしまうことを考えると、やはり市場インデックスを上回る手段は何かしら残されているような気もする。資産運用や投資に多少時間を割ける人なら、運用に回す資産の8割ほどを低コストのインデックスファンドの積み立て投資にするとしても、残りの2割は勉強も兼ねて、いろいろな商品を購入することで実験してみてはどうだろうか。

森永 康平 マネネCEO/経済アナリスト

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もりなが こうへい / Kohei Morinaga

証券会社や運用会社にてアナリスト、エコノミストとしてリサーチ業務に従事した後、複数金融機関にて外国株式事業やラップ運用事業を立ち上げる。業務範囲は海外に広がり、インドネシア、台湾、マレーシアなどアジア各国にて新規事業の立ち上げや法人設立を経験し、各法人のCEOおよび取締役を歴任。現在は法律事務所の顧問や、複数のベンチャー企業のCFOも兼任している。日本証券アナリスト協会検定会員。株式会社マネネTwitter

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