スタバが徹底的にこだわる「特別な店」の正体 限られた場所に「リザーブ」を展開する理由

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サイフォンコーナーにあるサイフォン抽出器(筆者撮影)

「リザーブ」は、コーヒーへのこだわりを抽出方法でも訴求する。器具は前述したサイフォンのほか、「コーヒープレス」など5種類もある。サイフォンでいれることを頼めば、一枚板のカウンター「SIPHON」コーナーの前に座り、抽出作業を見ることもできる。

このあたりも通常のスタバとは違う。通常店の来店客の中には、モバイル機器でノマド作業をする人もいれば、勉強する学生もいる。過ごし方は自由だが、これらが長時間に及ぶと座席待ちのお客から厳しい目が注がれる。数回の訪問で見たかぎり、「リザーブ」来店客は、簡単なミーティングをする人はいたが、ノマド作業をする人は見掛けなかった。

かつて学生街のマクドナルドでは、「当店はレストランですので、長時間の作業や勉強はご遠慮ください」という掲示があったが、「リザーブ」はそうした断り書きをしなくても雰囲気でしにくい空間となっている。

コーヒーを深めたい従業員の「受け皿」

従業員満足につながる「リザーブ」の別の効果も紹介したい。

業界関係者からは、「リザーブの業態は、スタバ内で悶々としていた意欲の高い従業員の気持ちを鼓舞することに成功した」(コーヒーコンサルタント)と指摘する声もある。

どういうことか。従業員にはコーヒー職人として、抽出技術をより高めたい人もいる。そうした人材にとって、コーヒーを追求する特別な店があることは目標につながるのだ。

「スターバックスのホスピタリティと従業員のロイヤリティはかなり高い」と評価する一方で、同コンサルタントは、「コーヒー品質の取り組みは道半ば」と話す。

同社も課題は認識しており、来年2月には「リザーブ」を進化させる。店内焙煎を行う新業態「スターバックス リザーブ ロースタリー」が東京・中目黒に開業予定なのだ。アメリカ・シアトル、中国・上海、イタリア・ミラノ、アメリカ・ニューヨークに次ぐ5番目だ。

今後スタバはコーヒーを深掘りし、さらに楽しみ方を訴求するはずだ。国内の「スターバックス リザーブ バー」は、マーケティング収集と情報受発信の場にもなっている。

高井 尚之 経済ジャーナリスト、経営コンサルタント

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たかい なおゆき / Naoyuki Takai

学生時代から在京スポーツ紙に連載を始める。卒業後、日本実業出版社の編集者、花王情報作成部・企画ライターを経て2004年から現職。「現象の裏にある本質を描く」をモットーに、「企業経営」「ビジネス現場とヒト」をテーマにした企画・執筆・講演多数。近著に『なぜ、人はスガキヤに行くとホッとするのか?』(プレジデント社)がある。

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