中学受験で"全落ち"した母子の「最終出口」 受験最終日、ミスチルの「ギフト」で号泣した

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個別指導塾に通う目的はただ1つ、劣等感を払拭すること。それさえできれば、集団指導の塾に戻っても大丈夫だと考え、夏まで期間限定で通うことに決めた。

4月から7月までの4カ月の見積もりは30万円。シングルマザーで、会社員から独立したばかりの順子さんには大きな出費だ。

「でも、片親になったのは親の都合。本人の夢をあきらめさせたくはなかった。離婚調停では養育費をしっかりともらえるように努力しました」

小6での転居に、転塾。中学受験の世界では「ありえない」と言われてしまいそうな決断だが、それは見事、成功した。個別指導塾で伸也君は自己肯定感をみるみる回復し、めっきり明るくなった。そして、なんと偏差値を10ポイント上げたのだ。

当初の目的を達成し、個別指導塾は4カ月で退塾。新たに見つけた、自宅近くの別の大手集団塾Cに伸也君は移った。ほんの数カ月前まで深刻だった劣等感はほぼ見られなくなり、楽しそうに集団塾に数カ月通い、受験本番を迎えることになった。

滑り止め校の不合格で、全滅へ

伸也君が第一志望に据えたのは、いま人気の広尾学園。偏差値的には簡単に手が届かないチャレンジ校だが、見学に行った伸也君が授業の様子を気に入った。

第二志望、つまり本命にしたのは男子校で同じくサイエンス系にも力を入れる高輪中学。滑り止めには、当時の模試では安全圏に入っていた三田国際と日大系の中学を選んだ。

三田国際は第一志望・広尾学園の創設者がかかわった経緯があり、「ここならば受かる」と、塾の先生からも太鼓判を押されての出願だった。

しかし、この出願で順子さん母子は中学受験の恐ろしさを知ることになる。三田国際がメディアなどに露出したのをきっかけに人気が爆発、競争率が激変したのだ。

中学受験の人気校は、ふとしたことで入れ替わる。学校名が変わる、共学になる、制服が変わる……。火種は何とはいえないが、数年に一度、こうした変化をきっかけに、爆発人気を起こす学校が出現する。

三田国際がまさにそれだった。女子校だった戸板中学が2015年に共学化、名前を三田国際学園に改名すると人気が沸騰。インターナショナルクラスの新設、ICT教育などで多くのメディアに取り上げられたこともあり、本科クラスだけで応募者数総数は1000人超えに。一時期は30台、当時40台だった偏差値はこの年、一気に50台に急騰した。

伸也くんの受験はこのフィーバーの翌年。蓋をあけてみると、応募者総数はさらに増え、国際学級も合わせるとまさかの3000人超え、首都圏の共学校のうち、応募総数では5本の指に入るまでに膨れ上がっていたのだ。

伸也君の通う塾からは20人が受験したが、受かったのはたったの一人だったという。合格圏と塾から太鼓判を押されていた伸也君だったが、その一人とはなれなかった。その塾では「早稲田が第一志望の生徒でも落ちた」という。

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