中米「移民集団」がアメリカへ逃げているワケ キャラバンはいったい何を目指しているのか

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たとえば、ホンジュラスの場合、人口約1000万人のうち61%は貧困層に相当する(グアテマラ、エルサルバドルもほぼ同水準)。ホンジュラスはラテンアメリカで最貧国とされており、人口の40%が食糧難にあえいでいるとされる。トウモロコシ、インゲン豆、コーヒーが主要作物となっているが、耕作技術のレベルが低く、しかも害虫の被害も出ているという。それに加えて、エル・ニーニョ現象で干ばつに見舞われている。

ホンジュラスにはびこる暴力組織の存在

報道によると、ホンジュラスに住むヘスス・コナンさんはトウモロコシとインゲン豆を1ヘクタールの耕地で栽培をしていたが、昨年も今年も干ばつで収穫を得ることができなかった。それでも、栽培に必要な投資はせねばならず、経済的に苦しい状態に陥ったことからキャラバンに加わることにしたという。コナンさんには16歳、14歳、11歳と3人の子どもがいるが、妻と子どもたちはホンジュラスに残った。生活苦から子どもたちは学業をあきらめたそうだ。

アントニオ・ララさんの場合は、コーヒーの栽培をしているが、7年前から気候の変化で思うように収穫量が確保できなくなった一方、買い付け業者が支払う金額も採算に合うものではなかったという。そこで、6歳と18カ月の子どもと妻を連れてキャラバンに加わった。

今回、キャラバンに参加している中米3カ国では農業従事者が労働者の3分の1を占めているが、農業に携わっている人たちの多くがコナンさんたちのような状況に置かれていると考えていいだろう。

移民を決めたもう1つの理由は、暴力組織の蔓延だ。この3カ国では、暴力組織「MS-13」と「La Mara 18(ラ・マラ)」による犯罪が横行。これらの組織の中心は、15~25歳くらいまでの若年層だが、人の首を切って犬の餌にするといった残虐な行為も辞さない集団で、主に農村部よりは都市部で活動している。

この組織のルーツはアメリカにある。カリフォルニア州で1980~1990年代にかけてエルサルバドルからの移民を守るために生まれた暴力組織が「MS-13」で、参加者の多くが自国の内戦を体験しているにもかかわらず、それと同じような残酷は犯罪を起こすようになっていく。

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