中米「移民集団」がアメリカへ逃げているワケ キャラバンはいったい何を目指しているのか
業を煮やしたアメリカが彼らを本国に送還したわけだが、もともと働き口が少ないこともあって、犯罪組織に「就職」する人が増えてしまった。現在ではアメリカに今も残っているメンバーを含め、中米3カ国を主体にMS-13に参加している人の数は、7万~10万人にも上るとされる。最近では、スペインやイタリアにも構成員がいるようだ。
一方、MS-13に対抗して生まれたのがLa Mara 18である。ホンジュラスにMS-13が登場したのは1991年とされる。ホンジュラスだけで見ると、7000人がLa Mara 18に、5000人がMS-13にそれぞれ属して非道を行っている。彼らの収入源は麻薬や武器の販売を始め、恐喝、誘拐、盗難、そして殺害も依頼されれば行う。
ホンジュラスは政治的にも不安定
彼らの残虐さを示すのが、ホンジュラスの殺人数の多さだろう。2017年には3866人が殺害されており、これは10万人につき43.6人が殺されている計算だ(2011年はこの数字は、10万人につき86.5人だった)。ホンジュラスを抜き、世界一の「殺人大国」となっているエルサルバドルでは、昨年10万人につき60.1人が殺害されている。
ホンジュラスは政治的にも不安定だ。2009年にもクーデターがあったほか、現職のフアン・オルランド・エルナンデス大統領も汚職にまつわるスキャンダルが尽きない。しかも、ホンジュラス憲法では大統領の任期は4年と定められているにもかかわらず、最高裁との癒着によって2017年に再選されている。こうした中では、市民の生活を改善するような政策などとても期待できない。エルサルバドルとグアテマラはこれより幾分ましなものの、両国ともクーデターを経験している。
厳しい生活事情から仕方なく国を脱出した移民たちを軽蔑するかのように、選挙の餌にしたのがトランプ大統領である。大統領選挙の時から不法移民に対して厳しい姿勢を見せて、それが票につながっていたのを知っているトランプ大統領は、キャラバンを批判し、「不法移民」を取り締まる姿勢を示すことで、票を稼ごうとした。
トランプ大統領は10月22日、ホンジュラスなど3カ国に対し、これまでアメリカが提供していた支援金の支給を各国の政治指導者が集団移民の北上を食い止めなかったとして中断させることを発表。アメリカの国際開発庁(USAID)の2018年度の支援金はそれぞれ、ホンジュラスが1500万ドル(16億5000万円)、グアテマラ5200万ドル(57億2000万円)、エルサルバドル2000万ドル(22億円)となっている。
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