市場が見透かす弥縫策、時価会計凍結は抜本策を遅らせるだけ


 日本でも、会計基準委員会で現在議論中で、年内に結論が出る。ただ、変更が可能となり、安易な保有目的の変更が頻発すれば、銀行経営者の収益計画やリスク管理のずさんさを示すものとして批判されるだろう。

第三点は、株の時価評価の凍結。株式は、どこから見ても流動性のある厚みある市場で市場価格がついている。これはさすがに、日本の会計士も「見識が問われる」と否定。会計基準委員会は門前払いした。お鉢は自己資本規制比率の“運用の弾力化”という形で、金融庁に回った。

結局、金融庁は、2012年3月期までの時限措置として、国債の評価差額は損も益も自己資本比率の計算に反映させないとし、社債や株については、地銀の多くが採用する国内基準では評価損益を反映させない、国際統一基準は勝手に変えようがないので、従来どおり、とした。

時価会計悪玉論は、高熱で働けなくなったのは体温計のせい、という理屈に似ている。時価会計凍結は体温計を壊してしまえ、というのに等しい。変動利付国債の理論価格への変更はまだしも、株や社債はもちろん、安易に対象を広げるべきではない。自己資本には評価損をカウントしないようにしようというのは、「体温計を見なかったことにしよう」ということだろう。

公的資金入れれば不要な議論

冷静に考えてみよう。自己資本規制に評価損益を参入しなくても、シミュレーションは容易だ。その銀行の保有する資産価格に問題あり、となればかえって、疑心暗鬼が広がる。経営者もそれがわかっているから、自行の保有資産の価格が実際はどんどん下がっているのに、リスクアセットを膨らませるようなリスクはとれないだろう。

だいたい、3年先に出口があるのか。どこまでが流動性欠如による異常な暴落なのか、どこまでがバブルの解消による正常価格への回帰なのか、少なくとも株や社債などの信用リスク商品についてはわからない。

経済価値に即した実態を開示したうえで、何とか自力で資本を調達すること、それが厳しい経済環境で無理なのであれば、公的資金を入れること。それが必要な事態となってきた。時価会計の凍結は、むしろ、こうした抜本策を先送りさせるおそれがある。





(大崎明子 =週刊東洋経済)

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