公共交通「住民はタダ」、なぜ実現できたのか 日本と欧州は「市民サービス」の考え方が違う

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タリン市民は今では90%以上の人が無料化に賛同しているそうで、表立った場所で有料に戻るべきだと話す人は見られないという。さらにエストニアではタリンの成功を受けて、今年7月1日から15ある県のうち11県で無料化が始まった。残りの4県はタリンでも無料化に反対した政党が政権を取っているために導入されなかったが、住民が県による差を容認し続けるのは難しいのではないかというのがアラキュラ氏の見解だった。

外国人旅行者の無料化については、同氏は肯定的な立場であったものの、観光やプロモーションの分野での議論が必要であろうとも語っていた。ただし電子国家らしくキャッシュレス化は現状でも進んでいる。

タリンの公共交通は、現金払いでは2ユーロだが、郵便局やキオスクなどで売っている「スマートカード」にすれば1時間1.1ユーロ、1日3ユーロとはるかに得だ。さらに美術館入場券、レストランの割引などがセットになった「タリンカード」(大人24時間25ユーロ)では無料になる。

アプリで事前決済できる

筆者はもうひとつの方法を使った。スマートフォンのアプリにクレジットカードを登録することで、乗車回数分の運賃を事前決済するシステムだ。

スマホアプリで表示するQRチケット(筆者撮影)
トラム車内のチケット読み取り機(筆者撮影)

支払い手続きを終えるとQRコードが表示されるので、乗車時にドアの脇の端末にかざせばいい。古い路面電車車両も最新の端末を装着しているので問題ない。カードよりモダンという印象を抱いた。

最初に書いたように、公共交通無料化を実施した都市はタリン以外にも存在する。この分野に明るいアラキュラ氏が教えてくれた。

「エストニア以外ではフランスが目立ちます。北部のダンケルクは、これまでも週末は公共交通が無料でしたが、今年9月1日から全日無料になりました。中西部のニオールは、都市の規模ではダンケルクに続いており、昨年9月から無料になっています。マルセイユ郊外のオーバーニュは2009年から無料化を導入しており、2014年に開業したトラムも無料になっています」

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