日本の鉄道が北欧「赤字鉄道」から学べること スウェーデンに学ぶ観光鉄道の成功例

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エステルスンド駅で、インランスバーナンの列車に乗り込む観光客。皆、休暇を楽しもうと大きな荷物を持ち込む(筆者撮影)

ローカル鉄道を存続させるため、観光客を広く内外から誘致し「観光鉄道」として再生させようという動きが、ここのところ各所で見受けられる。過疎地域を走ることから、地元の需要を頼っていては、とても採算が合う見込みはない。そこから考え出された方策である。

国内では大井川鐵道が典型的な例だろう。1976年から続いているSL列車の運転は、2016年で40周年を迎えた。観光客向けの列車の運転によって、関連事業を含めた会社全体で収益を上げ、それによって地域の足であるローカル列車を運転する経費もまかなおうという経営姿勢なのだ。

「確実」なパターンに頼る観光列車

ただ、エンターテインメントに対して「目が肥えている」都会からの観光客に対し、強くアピールできる演出のアイデアは、なかなかないものだ。

極端な失敗例もあまり見当たらない。とはいえ、全国の鉄道を見回してみても、列車内で地元の産品を基本とした料理や飲み物を提供する「グルメ列車」。根強い人気がある「SL列車」や「トロッコ列車」。そして、鉄道のデザインに大きな変革をもたらした「水戸岡鋭治氏をはじめとする、産業デザイナーがデザインした列車」。この3つのうちのどれか、もしくはその組み合わせに収斂しつつあるように思える。

これらは定評を得ている。しかし、あえて言うなら無難な集客アイテムでもある。また「列車に乗ること自体を目的(楽しみ)とする」、すなわち、列車そのものが観光資源となっている傾向もある。大井川鐵道のように、鉄道が地域でいちばんの観光目的地となっているケースもあるのだ。

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