日本の鉄道が北欧「赤字鉄道」から学べること スウェーデンに学ぶ観光鉄道の成功例
当然ながら、観光資源の開発・維持のためには、初期投資に始まって、効果を上げるまで一定の期間、継続するためのメンテナンス費用。そして、終始多くの人手が必要となる。
このことは、2015年9月14日付の私の記事「SLの運行には、手間もカネもこんなにかかる」でも言及した。失敗が許されない状況で投資を行うには、実績がある堅実な企画に落ち着くのも、やむを得ないところだ。
JR各社における「そのものが観光資源」という列車の嚆矢は、1989年運転開始の「トワイライトエクスプレス」だろう。前年登場の寝台特急「北斗星」のコンセプトを拡大、発展させ、移動手段ではなく、乗って楽しむことのみを考えた列車となったのだ。
「北斗星」「トワイライトエクスプレス」は、「豪華列車」として大きな成功を収めた。そこから観光列車イコール豪華列車というイメージが、バブル景気に乗って形づくられたように思われる。
この傾向は、デザインの方向性が華美かシンプルかはともかくとして、現在にまで受け継がれている。豪華であることが、観光客を誘う大きな要因であることは間違いない。
しかし豪華にしなければならない理由は、果たしてあるのだろうか?また、右にならえでは「全国どこへ行っても同じ」という評価を招きはしないだろうか。
世界的人気、スウェーデンの超ローカル線
私は2016年8月にスウェーデンの観光鉄道「インランスバーナン(Inlandsbanan)」に乗車する機会を得た。直訳すれば「内陸鉄道」で、バルト海に沿って走る幹線鉄道に対し、ノルウェー国境に近い山岳部の人口希薄な地帯を縦貫している。
スウェーデンの面積は日本の約1.2倍。しかし、人口は約950万人にすぎず、その大半は、首都ストックホルムを中心とする中南部と沿岸部に固まっている。開拓と国防上の理由(バルト海を挟んだ対岸のフィンランドは、ロシアの侵略を何度も受けている)により、1937年と古い時期に全通したインランスバーナンも、地元の旅客需要はごくわずか。元来はSJ(スウェーデン国鉄)によって運営されていたが、もちろん超赤字路線であった。
そこで、日本で言うところの「上下分離」が実施され、線路などの設備は公有、列車の運行・営業はインランスバーナン株式会社によって行われる形となった。まさに、JR北海道の閑散路線がたどりつつある経緯の先行事例でもある。
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