日本の鉄道が北欧「赤字鉄道」から学べること スウェーデンに学ぶ観光鉄道の成功例
インランスバーナンは中部の都市エステルスンドを拠点としており、南のムーラ、北のイエリバエまで2系統の列車を運行している。このうち、私が乗車した北ルートは746キロメートル(東京〜岡山間とほぼ同じ)を約13時間かけて走る。世界的なリゾート地ヨックモックを通り、コースの北端は北極圏にかかるため人気があるルートだ。
2017年の観光列車の運行は、南北とも夏季(6月中旬~8月中旬)、1日1往復のみに限られる。
乗車した時は米国からの団体客が席を埋めており、私も予約を取るのが困難であった。座席の予約は、インターネットサイトから可能。世界的な常識だろうが、決済はクレジットカードである。インターネットでは予約できない席もいくつか設定されており、それが地元利用者向けらしい。なお、スカンジナビア各国は子供の頃からの英語教育が徹底しているため、もちろん英語のサイトがあり、旅の用もすべて英語で足りる。
車両は特別なものではなく、ローカル列車用のディーゼルカーを改造し、飲み物やお菓子、お土産品などを並べた、簡単な売店を設けただけである。しかし、座席は2人掛けリクライニングシートであり、快適性は確保されている。列車には、日本でいう「アテンダント」が乗務。要所要所で英語の観光案内を入れる。
風景は北海道のほうが面白い?
長時間、列車に乗っていると食事が大きな楽しみだが、インランスバーナンでは、日本で言えば「道の駅」のようなドライブインのすぐ脇に短いホームを設け、そこで30〜50分程度停車(閑散路線ゆえ、長時間停車しても差し支えない)して食事ができるようになっていた。メニューは座席に備えてあり、アテンダントが予約を取って回る。
食事以外にも2~4時間に1回程度、5~15分ほど停車する駅を設けてあり、リフレッシュタイムとしていた。その中の一つに、この鉄道が北極圏に入る交差ポイントにある仮設駅がある。
インランスバーナンの列車は森林の中をかなりの高速で走り、短い鉄橋を渡っては、また森の中へ。たまに集落が現れ、駅があるというパターンである。眺望が開け遠景が楽しめたのは、路線の北端に近い、ヨックモック到着の直前ぐらいだった。
風景というものは、どんな絶景でも5分も眺めていると飽きる。正直言えば、13時間も乗っていると退屈する。森や川、湖の風景は美しいのだが、車窓が単調で変化に乏しいのだ。
これも率直な感想として、隣国ノルウェーのバラエティに満ちた車窓には及ばず、北海道の花咲線や宗谷本線の方が、はるかに変化があって面白いと思う。条件を整え、PRを十分に行えば、日本の鉄道にも成算はあるのではないだろうか。
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