クールジャパン、有望株は食とコンテンツ クールジャパン機構社長インタビュー

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地方活性化にも寄与

「地方発世界へ」──。その成功例として、山口県岩国市の日本酒「獺祭」(旭酒造)を挙げる。東北や兵庫のような「酒処」ではない岩国市の日本酒を世界に売り込み、世界で評価され、それが日本に伝わり、日本でもブームになっている。「日本の良さを地方発で世界に認めさせ、日本にも認識させた。典型的な成功事例であり、これからの日本の方向性だと思う」と話す。

批判も多い官民ファンドだが「民間ファンドは短期で利益を出すことを目指す。しかし、われわれは、種をまき、芽が出て、少し伸びるまで、長期的な投資を行う。ファンドが儲けるのではなく、投資先が儲かることが必要」と役割の違いを強調する。「地方都市の製造業に多少元気が出たり、残れる人が出てくれば、日本のモノづくり、日本の文化が残る。そこは大事にしなければならないし、官民ファンドであるわれわれのある種の責任だと思う」と、意気込みを語る。

安心・安全などに見合った対価を

太田社長は、イッセイミヤケの社長など一貫してファッションの世界に身を置いてきた。2年8カ月の松屋<8237.T>常務執行役員時代には、銀座三越と共同で「銀座ファッションウィーク」を企画。多くの規制をクリアして銀座でファッションショーを実現するなど、新しい挑戦が話題となった。

魅力的な商品が海外の販売先から値下げ要求され、唯々諾々と応じた結果、利益が出ないまま輸出を継続してきたという例を、太田社長は数多くみてきた。今回、社長に就任した理由について、そこから脱出する「ラストチャンスかもしれないと思い、改革を引き受けた」と説明する。

人口減少の日本にとどまるのではなく、これからは、世界市場を相手にしたビジネスが必要としながらも「これまでのやり方では通用しない」という認識だ。太田社長は「上海でふじ(リンゴ)が1個、1500円で売られており、中国の富裕層向けに売れている」との例を出し「安心で安全、手間がかかっていることをきちんと説明し、見合った対価をもらうことが大切」と力説する。

「クール・ジャパン」は、安倍晋三政権の成長戦略である「日本再興戦略」にも盛り込まれている「第3の矢」のひとつ。官民一体で日本文化の国際化を目指す。スタート時の社員は30人程度、2014年末には100人程度を想定している。

本格的にスタートする25日時点でのファンドの規模は375億円。民間からは15社・75億円が集まっている。経済産業省によると、15年3月末までに900億円、最終的には1000億円規模にしたい考え。存続期間は20年程度を想定。当初は1件当たり100億円以下の規模の投資で、年間7―9%のリターンを想定している。現在、100件程度の投資申請が来ているという。

(清水律子 藤田淳子)

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