老舗シチズン「アップルと戦わない」時計戦略 スマートウォッチ開発で米フォッシルと提携
2016年からシチズンの傘下にあるスイスの高級腕時計メーカー、フレデリックコンスタントのピーター・スターツCEOは個人ブログで、「スイスの腕時計業界はアップルウォッチとその他のスマートウォッチが、どれだけクオーツ時計のシェアに食い込んでいるかをまだ理解していないと感じる」と指摘。業界内でもスマートウォッチの成長と脅威に対する認識が十分でないとの危機感を示した。
シチズンがフォッシルとハイブリッドスマートウォッチのような中途半端な領域で手を組んでも、アップルウォッチのようなウエアラブル端末に対抗することはできない。そのような見方が提携を”悪あがき”とする根拠となっている。
世界初のBluetooth腕時計はシチズン製
シチズンの戸倉社長はそんな冷ややかな見方に対し、「もともとアップルウォッチに勝てないことは理解しているし、今回の提携は(アップルなどと)同じ土俵に上がって戦うことを意味しているわけではない」と話す。それはすでに経験上わかっていたことだった。
実はシチズンには、元祖スマートウォッチともいえる腕時計を開発した歴史がある。同社が最初に手掛けたのは2001年に日本IBMと共同開発した試作機「WatchPad 1.5」だ。腕時計型コンピュータとして作られ、指紋センサーや加速度センサー、音声通信にも対応したブルートゥースなどが搭載された。腕を振ると、画面内のキャラクターが手を振るといった機能が盛り込まれていた。
2006年には腕時計として世界初となるブルートゥース通信を可能とした「i:VIRT(アイバート)」を発売。携帯電話と通信を行い、着信を知らせる機能を持たせた。セイコーウォッチやカシオ計算機など同業他社も、計算機能や血圧測定機能など多種多様なスマートウォッチの前身となるものを開発したが、携帯電話と通信を行って「つながる」という点で、シチズンは現在主流のウエアラブル端末により近い製品を展開していた。
アイバートは進化を続け、2008年にはソフトバンクやシャープと「i:VIRT M」を共同開発。搭載された液晶パネルにはメールやニュースを表示する機能を搭載。時計でメールを読める機能は世界初だった。当時開発に携わった木原啓之上席執行役員は、「コネクテッドの機能が時計の可能性を広げたとして注目を集めた」と振り返る。
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