老舗シチズン「アップルと戦わない」時計戦略 スマートウォッチ開発で米フォッシルと提携
しかし、人気は広がらなかった。最大の原因は対応する携帯電話の機種が限定されていたためだ。「一つ一つの携帯電話の機種に通信規格が合うか手間をかけてチェックしながら開発していったため、当時のすべての携帯電話に合わせることは難しかった。時計のハードウエアを作る技術はあるが、デジタル分野で重要なソフトウエアの技術は弱かった」(木原氏)。
ソフトウエアに強みがないシチズンには、OS(基本ソフト)を搭載し、多彩なアプリケーションを使うことのできるアップルウォッチと同じ土俵で戦えないことを痛感させられたのだった。
ハードの強みを生かせる戦略で勝負
こうした経験を経たシチズンは、「技術と美の融合」という同社の理念に立ち返った。液晶パネルを採用するなどデジタル路線だったスマートウォッチのデザインを、アナログ時計の路線へと戻したのだ。
アップルウォッチ発売から1年後の2016年、シチズンは「エコ・ドライブ Bluetooth」シリーズを発売した。エコ・ドライブは光発電によって電池の交換を不要としたシチズンが強みとする技術である。
メールの閲覧など、液晶パネルでないとできない機能を廃し、スマホの着信を伝える機能など最低限の機能に特化した上で、アナログ腕時計と同じように扱えるようにした。ウエアラブル端末という位置づけではなく、”つながる機能付き腕時計”として打ち出した。
「毎日充電が必要でスマホを補完するようなウエアラブル端末ではなく、スマホと共存していく腕時計を目指している」。開発担当の木原氏は、メーカーとしての開発姿勢が当初のスマートウォッチから変わってきたのだと明かす。あくまで「腕時計会社として美しい腕時計を追究していく」(同)という。
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