ジョン・ハンケ、「ヒット連発リーダー」の秘密 「グーグルマップ」誕生の軌跡とは?

著者フォロー
ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

キーホールは創業5年目にしてグーグルに買収されている。それだけ聞くと、キーホールは順風満帆な道をたどって買収へと至ったように思うかもしれない。けれど、多くのスタートアップ同様、キーホールの道のりも決して楽なものではなかった。

キーホールは1999年に設立し、本格的に会社を運営するため、2000年ごろから資金調達に動く。しかし、これは最悪なタイミングだった。インターネットバブルの崩壊が始まり、スタートアップに投資したいと考えるベンチャーキャピタルは姿を消した。キーホールはやっとのことでシリーズAの資金調達に成功するものの、会社は十分な売り上げをあげられずにいた。

「倒産寸前」で起きた幸運

2002年、資金が尽きかけ、ジョンは苦肉の策に打って出る。友人や家族から出資を募り、さらには社員に株式を提供する代わりに給料をカットする施策を行った。自分の会社がそのような状態なら、CEOはもとより、社員としても落ち着かない気分だろう。

けれど、キーホールのメンバーはリーダーであるジョンと自分たちのビジョンを信じ、窮地に陥っても最後の最後まであきらめることはなかった。メンバーの多くは大幅な給料カットに応じ、数人においては全額カットに同意した。ジョンも自分の貯金を崩して、会社の運営資金に充てた。そうしてキーホールはあと3カ月だけ倒産するまでの猶予を得る。

キーホールにとって幸運だったのは、それからまもなく、以前から話を進めていたIn-Q-Tel(CIAの投資部門)とCNNとの大型契約が決まったことだ。CNNはイラク戦争の状況を伝える24時間放送の報道番組でキーホールアースビューアを使い始めた。契約にのっとって、番組ではキーホールアースビューアを使うときに必ずキーホールのURLも画面上に表示した。このおかげでキーホールは爆発的に認知を伸ばすことができ、多くのユーザーを獲得することができた。

CNNでキーホールアースビューアが使用されている様子(写真:Never Lost Again

チームメンバーがジョンを信頼していたのは、ジョンもまたメンバーのことを信頼し、尊重していることがわかっていたからのように思う。たとえば、本書にはジョンとグーグルとの買収交渉でこんなエピソードがある。

通常、テクノロジー企業の買収では、社員には彼らの持っている株式分の現金や買収元の株式が支払われるものの、買収後に仕事があるとは限らない。しかしジョンは、グーグルがキーホールの買収に興味があると聞いた際、「チーム全員の採用を約束してもらうのが条件です。それが可能でないなら、お互いの時間を無駄にすることはないでしょう」と交渉を始める前から伝えていた。誠実で、信頼のおけるリーダーであったからこそ、いよいよ倒産まで3カ月となっても、メンバーも最後まであきらめずに団結することができたように思うのだ。

次ページ結婚目前に、地球上で最も魅力的な求婚者が現れた
関連記事
トピックボードAD
ライフの人気記事