「旅するダンボール」は、心温まる記録映画だ 不要品で財布を作る異色アーティストに密着
誰も見向きもしなかったダンボールに、ちょっとひと手間加えると、かわいくてカッコいい財布に“再生”。その財布を手にした人の口からは「すごい!」という声が飛び交い、おのずと笑顔が広がる――。
ダンボールアーティストの島津冬樹氏に密着したドキュメンタリー映画『旅するダンボール』ではそういった場面が随所に映し出される。そしてその様子を見て、屈託のない笑顔を見せる。相手を驚かせたい、喜んでもらいたい、という思いが彼の創作の原動力のようだ。
2009年、島津氏は、世界中の街角で捨てられたダンボールを拾い、かわいくてカッコいいダンボール財布に生まれ変わらせるブランド「Carton」を立ち上げた。
公式サイトでも「不要なものから大切なものへ」というコピーのもとに、「役目を終えると捨てられてしまう段ボール。しかしよく見てみると豊富なデザイン、国ごとの違いなど、奥深い点がたくさんあります。そんな段ボールの多様性や魅力を『財布』という身近なものを通じて、少しでも気づいてもらえたら」とメッセージを発信。その財布は、日本のみならず世界でも注目を集めているという。
“アップサイクル”を体現する活動に密着
大量消費の波が世界を覆い、使い捨てが常態化してしまった中、限りある資源を有効に使い、未来につなげることが求められている。そんな中で、一度使ったものを再利用するリサイクルの重要性が広く叫ばれている。
そして今、不要になったものを、付加価値を高めた新たな製品に仕上げる「アップサイクル」というムーブメントが注目を集めている。ダンボールから財布を作るという彼の活動は、まさに「アップサイクル」を体現している。それゆえに雑誌やテレビなど数多くのメディアが彼の活動に注目してきた。
だが、そんな社会的ニーズの高まりとは裏腹に、彼自身はそういった周囲の喧噪からは離れたところに立っているようにも見える。「ダンボールが好きすぎる」「ダンボールを世界中の人に愛してもらいたい」という彼のモチベーションは非常にシンプルであり、そしてピュアである。
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