KDDIは「官邸からの宿題」を本当に果たしたか 楽天と提携でクリア?菅発言前の値下げ強調

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最終的にどこもローミングに応じなければ楽天の携帯事業が大きくつまずくため、既存3社にとってはそれがもっとも望ましいはずだ。

ただ、そうなれば菅氏や政府が熱望する「第4の携帯通信事業者」誕生の芽が摘まれてしまう。携帯電話の許認可権限を持つ政府が、楽天の参入をつぶすようなことを当初から認めるはずはない。つまり、髙橋社長が「どこかが対応する」という発言の真意は、どこかが「必ず対応せざるを得ない状況になる」という意味ではないかと推察できる。

自社が応じなくても、最終的に他社が回線を貸すのであれば、どのみち楽天は全国展開が可能になる。官邸や政府の意向の中で楽天を阻止できないのであれば、「うちが貸し出してネットワークの使用料をもらい、さらに何か対価をもらおう」と考えるのは理解できる。そのローミング契約との抱き合わせで、KDDIが楽天に求めたのが、スマホアプリ決済や通販の物流のインフラ提供だったようだ。

特にスマホアプリ決済での提携は、KDDIにとっては意味がある。来年4月から新たに始める「au PAY」で、先行する楽天の「楽天ペイ」に加盟する120万の店舗網をいきなり使えるようになるためだ。携帯電話の契約数が頭打ちになる中、KDDIはスマホを起点にした金融や通販事業など非通信分野の拡大を目指している。通販事業で活用できるようになる楽天の物流インフラと合わせて、KDDIが目指す方向に合致する。

KDDIとのローミング契約の成立で、楽天の携帯電話事業の全国展開にめどが付き、菅氏や政府が望む「楽天の参入による活性化と、その効果による通信業界の料金値下げ」に一歩近づいた。この提携について、ある関係者は「KDDIは楽天とのローミングに応じることで、官邸との(通信料金値下げをめぐる)バーターになっているのかもしれない」と口にする。

「ドコモと同等のものはすでにやっている」

もっとも注目を集める通信料金問題では、髙橋社長はドコモの来年度からの見直しに対して、「ドコモと同等のものはすでにやっている」と、ある程度対応済みだと主張した。

ドコモは料金見直しの詳細を明らかにしていないが、分離プランの拡大を軸に大幅な値下げに踏み切る見通しだ。分離プランとは、端末代金と通信料金を切り離した料金体系のこと。端末の割引を縮小する一方で、通信料を2~4割安くする方向になりそうだ。

見直しによる「利用者への還元の総額」は、1年間で最大4000億円。これによりドコモは来期、5年ぶりに減益に沈む見通しだ。今期並みの営業利益(9900億円)水準への回復は、2023年度まで待たなければならない。

他方、KDDIの髙橋社長は「利用者への還元はすでに真摯に対応している」と繰り返した。auは昨年7月に導入した「auピタットプラン」や「auフラットプラン」で分離プランを推進している。KDDIによると、auピタットプランで利用者への通信料の平均請求額は、約3割下がっているという。

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