口座情報「同意なし」ビッグデータ活用の波紋 三井住友FGとヤフーの新たな合弁会社が検討

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2017年8月の発表から8カ月。三井住友フィナンシャルグループとヤフーの合弁会社は、いまだに設立されていない(撮影:今井康一、尾形文繁)

「こんな住宅ローンはいかがですか」「こういう投資信託がありますよ」

もしも、自分の口座情報などがビッグデータとして集められ、銀行の外で分析され営業に使われたら――。三井住友フィナンシャルグループ(FG)とヤフーは2017年8月、ビッグデータ分析やアプリ・サービスの開発を行う新たな合弁会社の設立(三井住友FGが49%、ヤフーが51%を出資)を発表した。両社はその時点で、収集した情報を匿名化するのか、本人の同意を得るのかを明らかにせず、利用者の間に波紋を広げた。

ただ、「9月以降」としていた新会社はいまだ設立されていないことが取材によりわかった。また、設立する際には、同意は得ない形になる見通しであることも判明した。ビッグデータの活用が進む中で対象の情報はさらに広がりそうだが、利用者にとっては勝手に外に出されたくないものも当然ある。法的には同意が不要でも信頼関係上の話は別で、今後は問題化するケースも出てきそうだ。

新会社設立発表後、ネットは”炎上”

「もう口座を解約してやる」「預金をよその銀行に移す」。三井住友FGとヤフーの新会社設立が発表された昨年の8月9日、ネット上のSNSには、怒った利用者からの書き込みがあふれた。この日、両社は業務提携と新会社設立を発表したが、一部で「匿名化や同意を得るかはこれから検討する」と報じられたことで不信感が広がったとみられる。実際に現時点で両社に問い合わせてみても、「そういうことはまだ何も決まっていない」(ヤフー)などという回答だった。

三井住友FGは約4000万人分の顧客情報を持っており、同意を得なくてよいのなら大量のデータを使うことができる。だが、同意を得た顧客だけに限ってしまうとデータ量は10分の1以下になるかもしれない。同意の有無は、事業規模などの根幹にかかわる項目であり、会社設立の発表時に決まっていないのは不自然だ。

表面上の答えは「未定」でも、「同意を得る」と説明していない以上、逆の可能性が高い。もし同意を得るつもりならば、はっきり説明したほうが、利用者の安心感を得られるのは明らかだからだ。逆に同意を得ないならば、注目度が高い発表時の段階で明言を避けることはありうる。現実的に考えても実際、口座を持つ利用者に改めて何らかの形で連絡を取って説明し、同意するかどうかを確認するのは容易ではない。

では、同意を得ずに口座情報などを外部に出す場合、どのような方法であれば法的に可能なのか。個人情報保護法は、個人情報を第三者に提供する場合は、本人の同意を得ることが原則であると定めている。だが、これには大きく2つの例外がある。

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