ソフトバンク孫社長、米国携帯合併の「本音」 半年前の説明とは矛盾する点が多かった
「経営権を対等にしたいと前回は破談にしたが、(今回は)妥協した。長い意味での勝利を取れば、妥協は恥ずかしくはない」
ソフトバンクグループの孫正義社長は5月9日の通期決算会見で、先月末に発表した傘下のスプリント(米携帯電話4位)とTモバイル(同3位)の合併合意について、そう述べた。
ソフトバンクグループの2018年3月期決算は、売上高が前年同期比2.9%増の9兆1587億円、本業の儲けを示す営業利益はビジョン・ファンドの評価益やスプリントのコスト改善が効いて27.1%増の1兆3038億円だった。一方で、最終的な儲けを示す純利益は前年のゲーム大手のスーパーセルの売却益の反動が響き、27.2%減の1兆0389億円だった。
買収当時から描いていた合併
決算自体は順当で、大きなサプライズはなかった。会見の注目は、先月末に合意したばかりのスプリントとTモバイルの合併に関して、孫社長自らがどのように語るかだった。実際、会見で孫社長が最も時間を割いたのは、スプリントに関する説明だった。
もともと、スプリントとTモバイルの合併は、孫社長が2013年に約2兆円を投じてスプリントを買収したときから描いていた。当時スプリントは3位だったが、ベライゾン・コミュニケーションズ、AT&Tに利用者数で大きく引き離されていた。4位だったTモバイルとの合併で規模を拡大し2強を追い上げる構想だったが、米連邦通信委員会(FCC) が認めず一度は頓挫している。
ただ、その後も合併を目指してきたのは、単独では2強と戦うのが厳しいからだ。次世代規格の5Gでは、巨額の設備投資が必要になる。利用者数を増やし投資回収を急がなければ難しい。合併後の利用者数は、単純計算で1億2000万人以上になり、1億5000万人のベライゾン、1億4000万人のAT&Tに迫る。
2019年半ばまでを目指す合併後には3年間で、5Gに向けたネットワークの設備投資に400億ドル(約4.3兆円)を費やす計画だ。2社がバラバラにネットワークを構築するよりも、投資効率もあがる。こうしたメリットから孫社長は「今後は価格の大競争を仕掛けて、1位だって狙える」と述べた。米携帯市場での戦いを考えれば、確かに合併は合理的ではある。
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