ソフトバンク孫社長、米国携帯合併の「本音」 半年前の説明とは矛盾する点が多かった

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孫社長は独自の「群戦略」の重要性を熱く語った(撮影:今井康一)

孫社長は半年間の気持ちの変化として「群戦略が基本的な戦略として、より鮮明になった。ビジョン・ファンドも素晴らしい立ち上がりで、私の関心がより群戦略に移ったのは重要な要因だ」と認めた。群戦略は孫社長独自の構想で、世界各国の有望な企業に投資して、グループでシナジーを生み出しながら長期間の成長を実現しようという考え方。他の説明には矛盾点が多いことも踏まえると、これが孫社長の本音だと言えそうだ。

財務的なメリットは大きい

投資を加速させていくという意味では、合併は財務的なメリットも大きい。ソフトバンクグループの純有利子負債は2018年3月末時点で13.2兆円だが、うちスプリントが3.4兆円を占める。今回の合併でソフトバンクグループの新会社に対する持ち株比率は27.4%にとどまる。経営権は失うが連結から外れることで、今後、この負債の重石が消えることになる。

金利減効果も大きい。長年赤字が続いたスプリントは資金調達の金利が高かったこともあり、2018年3月期のソフトバンクグループの支払利息は5161憶円に上っている。合併後は、それが半減する見通しだ。財務的に身軽になるのは間違いない。

国内携帯事業会社のソフトバンクは、今年度中の上場を目指している。株式の3割ほどを売り出せばソフトバンクグループに2兆円程度の売却益が入る見込みだ。負債の大きさがたびたび指摘されるが、今後の投資拡大に向けた環境は整ってきているようにも見える。

「ソフトバンクグループは一体、何の会社かとよく聞かれる」「通信会社か、投資会社か、今現在は両方の側面がある」ともこの日語った孫社長だが、一連の説明からも、心は完全に投資会社の方にあることがうかがえる。孫社長は今後、一体どんな巨額投資で市場を驚かせるのだろうか。

奥田 貫 東洋経済 記者

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おくだ とおる / Toru Okuda

神奈川県横浜市出身。横浜緑ヶ丘高校、早稲田大学法学部卒業後、朝日新聞社に入り経済部で民間企業や省庁などの取材を担当。2018年1月に東洋経済新報社に入社。

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