高級ダウン「カナダグース」、人気ゆえの悩み 日本総代理店の幹部に聞くブランドの今後

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――なぜカナダグースはこれほど人気になったのでしょうか。

今はファッションとアウトドア衣料の垣根がほとんどなくなった。そうした時代の変化もあると思う。あと、本物志向の方が増えてますよね。アウトドア好きな方がジープを買ったり、マリンスポーツを楽しむ人が水深200メートルにも耐えられるようなダイバーウォッチを買ったり。実際にそこまでの機能は必要ないけど、どうせ買うなら本物がいいと。

カナダグースも同じだと思うんです。南極観測の科学者や冒険家、犬ぞりの世界チャンピオンなどにダウンパーカーを提供してきたブランドの歴史があって、その中で培った技術や高い機能が信頼につながっている。さらに希少性が人気に輪をかけているのかもしれません。

供給が追いつかず、各国が争奪戦

――「欲しいのに、どの店も在庫切れで買えない」という不満の声もよく聞きます。

カナダグース本社からの製品供給量に制約があって、取扱店への納入数をあまり増やせないんです。頑張って毎年、少しずつ輸入量を増やしてはいるんですが、それ以上に需要の伸びが大きくて追いつかないというのが実情です。

平井洋司(ひらい ようじ)/53歳。大学卒業後、アパレル輸入専門商社を経て、2010年にサザビーリーグ入社。米西海岸発祥のセレクトショップ「Ron Herman」の国内展開や、代理店ビジネスで同ショップと相乗効果のある海外ブランドの開拓に携わる。2016年より現職(撮影:尾形文繁)

――なぜ輸入量を増やせないのですか。

2つの理由があります。売れ始めたらアジアや東欧でバンバン作るブランドも世の中にはありますが、カナダグースは「メード・イン・カナダ」にこだわり続けている。あくまで自分たちの目の届くところで作るんだと。資源が限られているんです。

しかも日本だけではなく、おひざ元のカナダやアメリカ、ヨーロッパ、アジアなど世界中で人気が高まっている。カナダ国内で生産能力を必死に増やしてはいますが、品質を維持しながら生産量を短期間に増やすのは簡単じゃない。供給量に限りがある中で、日本を含め、どの国の代理店も自分たちへの割り当てを少しでも増やそうと必死です。

取り扱いショップからは「もっと数を回して欲しい」とせがまれますが、僕たちの力ではどうすることもできない部分がある。だから、営業マンには売り上げのノルマを課していなくて、(小売業者に卸した商品の何%が消費者に売れたかを示す)消化率を上げていこうと。ちなみに、去年の店頭消化率は97%でした。定価販売でこの数字は十分高いと思いますが、今年はさらに消化率を上げることが目標です。

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