実は働く妊婦に冷たいアメリカ企業のリアル 企業の配慮を促す法律もない
物流倉庫業界は、アメリカで最も雇用が拡大している業界の1つで、労働者数は100万人を超える。アマゾンで「いいね!」の数を競い合う小売業者は、低コストで迅速な配達を物流業者に求める。
妊娠中の女性に対する不当な扱いに関して、ニューヨーク・タイムズが従業員にインタビューを行ったのは、XPOが2014年に買収したベライゾン向けの倉庫だけだ。同倉庫での勤務は12時間続く場合があり、昼食休憩は30分、それ以外に15分間の休憩が3回だという。
進まない法整備
XPOの2017年の従業員向けハンドブックには、許可されていない休憩をとることや、遅刻、早退は、それが「法的に保護される」ものでないかぎり、「即時解雇」につながる可能性があると記されている。妊娠差別禁止法では、そのような保護が認められていない。
1978年制定の妊娠差別禁止法を改善する「妊娠中の労働者公正法」を提案してきたのは、超党派の議員グループだ。その法案は、妊娠中の女性に対し、追加の休憩時間や軽度の作業を選べるなどの配慮を義務づけるものである。ただし、事業に「過剰な負担」を課さないかぎり、という条件がつく。「過剰な負担」は「障害を持つアメリカ人法」でも使われている言葉だ。この法案は上院と下院において、125人の議員が共同提案している。
一方で、XPOの倉庫があるテネシー州選出のラマー・アレクサンダー上院議員ら一部の共和党議員は、この法案により規制がさらに複雑化するとみる。
上院厚生労働委員会の議長でもあるアレクサンダーは、対案を共同提案。法案では、一部のケースで妊娠中の女性の保護を拡大する。しかし、これまでと同じく、同様の状況にある労働者に対して配慮が行われていないのであれば、雇用主は妊娠女性への配慮を拒否することが認められる。
両法案とも行き詰まったままである。
(執筆:Jessica Silver-Greenberg, Natalie Kitroeff
翻訳:東方雅美)
© 2018 New York Times News Service
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